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「大阪都構想の住民投票」をロジカルに斬ってみよう(1)

住民投票のとんちんかん

 今回私たち大阪市民は一体何に投票したのか?意義を理解して投票した人は極めて僅かの人数だけだったように思う。一般市民レベルの理解は、賛成派の意見は「二重行政の解消」「既得権の打破」「大阪の発展」「東京一極集中の解消」「橋下さん頑張ってるから」等々。

 一方反対派の意見は「大阪市が無くなるのはいやだ」「住所が変わるのは困る」「橋下さんが嫌い」等々。こんなに重要な決定にも関わらず、正しく理解し、争点をしぼって投票した人が皆無かと思える異常さだ。大阪らしいといえば大阪らしいが。実質的には橋下氏への信任投票だったと言える。

客観的な事実

 では実際、どういうことだったのか、客観的な事実をまず羅列してみよう。「都構想」が可決した際にはどうなっていたのか?

1、「大阪都になる?」
 いいえ、「都」にはならず、大阪府のまま。大阪「市」がなくなり、5つの「区」に「分割」となり、地方自治体にとっての目指すべきゴールとなっている「政令指定都市」という強力な財源と権限を放棄する、が正解。東京23区や各区は実は、東京「市」や新宿「市」、世田谷「市」など「政令指定都市」になることを希望している。

2、「二重行政が解消される?」
 一部正解の大筋無関係。現時点でも多くは解消されている。府と市の権限的な壁は確かに無くなるが、大阪市をなくす事とは直接的な関係はあまりない、が正解。2014年に国の法律で二重行政不服申立制度が施行されており、県もしくは政令市の不服のあるほうが総務大臣に申立ができるようになっている。可決していたらしばらくは、むしろ逆に「府」と「旧市」と「特別区」との間での権益や財源の奪い合いが予想され、実質的には3重行政化に。

3、「財政効果があるんでしょ?」
 いいえ。橋本氏の最初の提言は4000億の効果だったのが、その後専門家の綿密な試算により、976億円に、さらに155億円に、そしてとうとう1億円程度になり、結局、当初の制度の入れ替えや役所の建替えで年間平均13億円の財政赤字が膨らむ、が正解。これ以降橋下氏は財政効果を主張しなくなる。

4、「既得権が解消される?」
 正解だがロジックとして「表現」に大きな矛盾。現在の主要な「既」得権層は多くを失うが、非主流既得権層と新たな権益層が取って代わり、利権団体の入れ替わりに過ぎない。ムダの解消や市民府民レベルの経済的利益とは無関係、が正解。

5、「東京の一極集中は解消され、東京のように経済発展する?」
 いいえ、「市」をなくしただけではそれは無理。東京がなぜこうなったのか?現在に至っては抑制不可能な人口集中のスパイラルに陥り、世界都市ランキングでも圧倒的な1位。交通アクセス(航空路線、新幹線)の集中、国内外から投資の集中など、人、物、金が集中。そうなった一番の直接的な理由は、何より「霞ヶ関」があるから、が正解。大阪一体行政で臨んだところでとうてい無理。

6、「目先が変わる、閉塞感の打破」
 まあ正解だが論点がずれている。どっちにしてもこのままでいいとはだれも思っていない。しかし「とりあえず」の感覚で変えるわけにはいかない問題。「どう変えるのか」が一番大事、が正解。

 

 今回の案はどうひいき目にみてもあまりメリットはない。府市一体行政の効率性よりも、政令市を放棄するデメリットのほうがはるかに大きい。普通に考えて関西全体のもっと大きな枠組みで考えない限り、大阪の発展は起こりえない。

 しかし今回半数もの市民が賛成しているわけだから、「本当に必要なこと」だったのなら、5年後、10年後にもう一度民意を問わなければならないはず。維新の会は言い続ける義務があるはずだ。なのにもう引退するという。じゃあ今回のこれ、なんだったのか?

 大阪市をおもちゃにして、バトルゲームを楽しんだだけ?という批判は免れない。厳しくいえば、今回の税金と先回の不要な市長の信任投票の税金は損害賠償に値する、が正解。これからの憲法改正等も同じことが繰り返される。

 何をしたかったのか、まだまだ細かな客観事実はきりがないが、主なところをざっと見ただけでも、多くの人の認識とはぜんぜん違う。今回可決していたら大阪「市」は消滅し、「政令都市」の権限を失っていた。「アカンかったらまた戻したらええやん」という気楽な声もあったが、残念ながら元には戻れない。特別区にする手続きの法律はあっても、政令市に戻す手続きの法律は存在しない。

 都構想が提起された当初とは、経済効果も二重行政問題も状況がまったく変わっており、中身のない抜け殻になっていたにも関わらずそのまま強行された。そんなこともこんなことも何にも知らずに投票所へ向かわされた。一体何に投票させられたのか?

 冷静に振り返ってみれば明らかにとんちんかんなのに、「ヒーロー橋下が頑張る、お祭り的な雰囲気」をメディアが数字獲得のためにつくり上げ、さまざまな矛盾がブラインドされてしまった。否決されて一番ホッとしたのは実は橋下氏だったのではないか。日ごろから論理思考力を養っておかないと、あっさり気づく間もなく巻き込まれていく。

 ではなぜ、そんなに論理矛盾をきたしたことを強引に成し遂げなければならなかったのか?その部分について、次回シリーズ2回目で掘り下げてみよう。

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