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業績向上人事(1) 人事の誤解と対策(1) 不満の真髄

エピローグ

 甲社は賞与支給日である。その日の飲みの席での先輩と後輩の会話。

A社員「今年はどのくらい増えた?」

B社員「今年は5万円しかアップしてないです。」

A社員「今厳しいからなあ。でもいいほうじゃない。」

B社員「先輩はどのくらい増えたんですか?」

A社員「まあ、同じぐらいかな。」

A社員の腹わたは煮えくり返っていた。「なんでこいつが5万アップで俺が3万アップしかないんだ。そんなに評価が低いのか?Bに教えて成績上げてるのは俺なんですけど。」総支給額ではA社員のほうがやはり多いのだが、問題はそこではない。この情報が事実ならばA社員は後輩のB社員よりも評価は低いということになる。「だからこの評価は納得できない。」

 どこの会社でも社員は処遇を高くしてもらいたいと思っている。であれば例えば社長に聞くであろう。どうすれば処遇は高くなるのかと。それはもちろん、高い評価を得たとき、と社長は答える。だからその高い評価を獲得できるであろうその状態へ、その数値へ努力する。しかし評価の結果は教えてもらえない。社長は言う、今は厳しいときだから全員我慢してもらっている。しかし君への期待度高い。次へ向かって頑張ってくれ。こう言われれば表面的には承諾するしかない。しかしこの対応が2回続けば、もう社長には聞きにはいかない。この社員の選択肢は2つに絞られる。

 ①表面上は頑張っているようにだけ見せかけて、日々は適当にやり過ごす。

 ②転職に向けての情報収集を始める

この会社での自分の将来はあきらめる。

1、人事の肝は評価

 人事といっても、範囲も広く多岐にわたる。ロジックツリーで分解に挑戦してみよう。

         人事

     処遇      育成

   供与   評価  教育 採用

福利厚生 報酬 

こんな感じか。

 人がやめていくウエイト順位  1、評価  2、教育  3、報酬

人は「金額」でやめていくのではない。その組織の中での相対的な「評価」に対して不満を持つ。その評価につながる業績、実務に対して、組織側からの示唆、情報提供、評価ポイントの提供が十分ではなく偏ったものであるにもかかわらず、求めることは一方的に求められる状況に対して辛抱ならないのである。耐え難い不合理を感じるのである。

2、成果主義人事制度を賃下げの理由に使わない

 業績を反映させた成果主義の賃金制度を、コストカット、賃下げの理由に活用してはまずい。固定給の削減の目的で歩合給を導入するというようなケースである。のちのち重大なしっぺ返しを受けることになる。会社の業績が悪いのは、必ずしも社員のせいではない。商売のやり方がまずいのか、商品の競争力が落ちたのか、当然にそちら側の問題。さらには業界自体のライフサイクルという根源的な要因もある。成熟期に入った産業の選択肢は2つ。①現在のビジネスモデルを見直す。 ②撤退する。  この成熟期に入った産業のしかも商品競争力の落ちた会社が、コスト削減で賃金制度を触り始めると終わりへのカウントダウンだ。間違っても上記パターンの会社が、社員の踏ん張りとコストカットで乗り切ろうとか、それはやっぱり無理である。ましてや賃金制度や人事評価制度を導入したからとて何かが活性化されるとか、そんな魔法は起こらない。

 成果主義人事制度はスタート時点から誤解されている。導入時の社長から社員への説明で「わが社もいよいよ成果主義人事制度を導入することとなりました。今後は皆さんの業績によって報酬にも個人差が出てまいります。頑張った人は大きなリターンを、そうでない人はそれなりです。」とよくある。成果主義人事制度のゴールが、処遇に差をつけて、一人ひとりの意識を発奮させるためであるならば、それは方向が間違ってしまっている。

3、社員の本当の不満は何か

 エピローグの例にあったように自分への評価は、処遇の結果、すなわちもらった昇給によってしか推測しえない。しかもそれは社員同士の腹の探りあいの会話で知る。ほとんどの企業では評価結果を本人には伝えない。ビジネス誌に掲載された、成果主義人事制度に対する不満のアンケート結果のランキング、1位・・・評価に対する納得が得られない。 2位・・・評価によって意欲が低下する 3位・・・社員間の賃金の格差が広がる 4位・・・職場の雰囲気が悪くなる etc. いつの時期にどこの会社でやっても大体同じ結果になる。するとこれを見た社長たちは「やはり公平、公正な評価制度が必要だ」と、より客観的で複雑な「制度」の提案を捜し求める。 しかしとりあえずまず、問題の核心はそこではない。そもそも社員たちは誰も、自分の評価内容を知らないのだ。評価結果をフィードバックし、本人との面談でその結果について話し合い、今後に向けての改善点や目指すべきことを話し合う企業は、外資系企業に僅かに見られる程度である。

 自分はどう評価されてのこの結果なのか、公式に知るすべが無い中での不満だけでなく、不安も大きいのだろう。自分はこのままでいいのか、今後の目指すべき方向性は会社の意図するところと合っているのか、わからない。社員の立場からすれば、言われもしないのに必要以上に無駄になるかも知れない努力は、当然しない。社長としては「こいつら本当に意欲が無い」と。モチベーションを高めようとはっぱをかける。色々言葉を費やす。しかし残念ながら、観念的な抽象語、抽象表現のオンパレードである。社員と社長、どちらに問題があるのだろうか?最終的に本当に困るのはどちらなのだろうか?

 残念ながら社長の問題意識の捉え方がずれている。課題設定の詰めが甘い。社員は結局、今この時点から、具体的に何をどうしたらいいのだろうか。目指すべき、あるべき姿の具体イメージが鮮明でない中では、人は先に向かって推進力高くは進めない。社長はそういうことを知っているのだろうか。それは何度も示しているつもりかもしれない。到達経験のある本人には当然のことであっても、経験の無いものにとっては、そこに向かう縮尺の小さい詳しい地図と詳細な乗り換え路線図が必要なのである。その準備はしているのだろうか、それは提供したのだろうか。「従業員」という人種は、「その地図と路線図を与えもしないくせに、わかりにくい行き先だけ示して、たどり着けなかったら文句を言われ、金もくれない。社長はわかってない」そう考えるのである。これが不満の核心だ。そういう事がわかっていないのに雇用をするほうが未熟だ、というふうに経営者は捉えるべきなのである。

 社員は言いたいことが山ほどある。社長としては聞く耳を持っているつもりだし、圧力的な社風でもないつもりだ。社員も怖くて言えない訳ではない。言っても通じない、社長では理解が出来ない、と思われているのである。はっきりとした顕在的な問題、課題なら言いやすいし、双方何についての話なのかの理解は出来る。しかし、潜在的に日常からやんわりと横たわる課題、不満については表現しにくいし、伝わる言葉も持たないし、社長に問題意識がほぼゼロだというような内容のことはだれも言葉にはしない。これの蓄積、成長したものを「埋めようの無い不満」という。これが一定基準に達すると退職する。表面的な退職理由は後付にすぎない。          続く

(「成果主義人事制度をつくる」引用、参照)

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