業績向上人事(5) 教育の誤解と対策(1) すぐ辞めていくのは誰の問題か
すぐ辞めていくのは誰の問題か
入ってきてもすぐ辞めていく。そんな悩みをどこでも抱えている。「今時の奴は本当にどうしようもない」。そんな風に嘆く。この問題の真の課題はどこにあるのだろうか?残念ながら答えは一つしかない。会社側の問題である。穴の開いたバケツに水を汲み続け漏れている時、蛇口からの流量が少ないことに対策を立てるだろうか。水質に問題があると先に検討するだろうか。まずは穴の対策のはずである。穴をふさぐのか、バケツを換えるのか。まずは100%純然たる、受け入れ側の問題だ。今の社風、体制が知らない間に、「穴の開いたバケツ」になってしまっていると気づけるか、という問題である。では「うちのバケツの穴」は何だろう?どこだろう?
一般的に人が辞めていく理由は1-3「社員の本当の不満」のところでも述べた。が、さらに詳しく見ると、人数が多く、組織の維持が優先の会社と、少人数の家族的なコミュニティーの部署、お店などでは事情は当然違う。人数の多い組織では「評価」の問題も大きなウエイトを占めるが、少人数の組織では「条件面」よりもほぼ「人間関係」が多いだろう。表面の直接的な理由は上司、先輩が主原因だ。でも辞めていく人はその理由に個人名は挙げていかない。雰囲気、空気とか風土がなじめなかった、とか言う。経営者も概ね把握はしている。「先輩社員のAがガンだ。すぐつぶしよる」と。ところが経営者自身がその対象になっている場合はそうは言わない。「いい感じだったんだが」と、なぜか肯定的に言う。まずは自分のことが見えていない。
いずれにしても早い段階で辞めていくなら、それはまずは「新人教育の段階」の問題だ。「新人教育」とは「教え方や言い方」ということではない。「しくみ、システム」の問題。表面に見える原因としては、先輩か教育係のAさんや経営者の「教え方、言い方」となる。しかし真の原因は、Aさんや経営者「が、教育を担当している、させている」ことであり、順に深堀していくと、Aさんや経営者「しか、担当する人がいない」ことであり、そしてAさんに「教育の仕方の「教育、指導」が施されていない」こと、経営者自身が「わかっていない」ことである。「うちのバケツの穴」はまずはこういうこと。「教育方法」だけで専門の会社が成り立つぐらいだし、世の中にはたくさんの専門のセミナーや書籍がある。無知識、無スキルで取り掛かろうということ自体が意識が甘いと言わざるを得ない。「うちの本当のバケツ穴」は経営者のこの「無見識」だ。