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戦略思考の心・技・体(13) 技「仮説検証・分解技法」(4)~本質に迫る「抽象化・普遍化」、構造化と条件化

本質に迫る「抽象化」「普遍化」

 「抽象化」「普遍化」とは、「対象の最大の特徴を抽出してその本質の部分を普遍的なモデル化し、同一の原理を多数のものにあてはめて解を導く」こと。要は1つの成功事例のサンプルからその法則、ルールを抜き出し、その他のケースにも当てはめて成功事例を増やしたい、ということ。人類が追い求め続けている永遠のテーマがこのこと。科学の分野、政治経済、すべてのジャンルで普遍化された法則を発見し、人類の利便性と安定した平和に役立てようとしている。ノーベル賞を取ったり、歴史的に名を残した人たちがやってきたことは極端にまとめるとすべて、この「抽象化」「普遍化」の作業。政治経済、科学研究のような一部の人だけでなく、一般的に最も必要とされているのは経営者もしくは企画の責任者の人たち。とても重要で必要なスキル。

「構造化」と「条件化」

 対象になる事柄や関わる人や表面的なあらゆる「条件」が違う場合でも、本質的な「構造」が同じでそのルールが適用できるなら同じ結果を得ることが出来る。それが出来るようになるには、1、「その事柄の本質的な「構造」はどうなっているかが分かること」と、2、「法則ルールの何が当てはまって何が当てはまらないのか、条件的に違うことはなんなのか、その違いがわかること」、この2つのことが分かる必要がある。

1、「その事柄の本質的な「構造」はどうなっているかが分かること」は、「構造化」とか「構造整理」とか「図解」とか表現される作業。さらに言えば、「形式として表現する」「図解指して示す」「形の無い概念、事柄をビジュアル化する」こと。もっと平たく言えば、「ハコを描く」「線でつなぐ」「矢印で流れを示す」「位置関係、力関係を見やすくする」ということ。複雑な多重構造をカンタンにしたい。

 作業手順としては、とりあえずハコ「❒」を描く。その中に色々単語、概念を入れてみる。色々当てはめてみる。入れ替えてみる。中身をずらしてみる。線でつないでみる。矢印で順番や時系列を出してみる。ハコ「❒」の位置を左右置き換えてみる。上下置き換えてみる。ハコ「❒」の大きさを大小差をつけてみる。そうしてみると関係性などが見えてくる。因果関係が鮮明になってくる。それっぽいらしきものが図解されてくる。しばらく寝かしておく。眺めてみる。なんか違うなあと、違和感を感じるようになる。色々ぐちゃぐちゃ遊んでみる。そのうちだんだん出来るようになる。何度もやっていれば精度は上がってくる。上手になって、気づいてみると、割とさつさとあらゆることに、ハコ「❒」を描き、線を引けるようになっている。ここまでなれれば、ちょっとしたヒントからアイデアがたくさん湧いてくる。そのアイデアは、今までのような脈絡も持続性も無い思いつきのアイデアもどきの妄想では無く、理論整合性のとれた、ちゃんと使えるアイデアとして機能する。既成概念も枠も超えたフレキシブルな思考体系が身についてくる。

 業種業態をも関係なく、適用、応用の効きやすいアイデアが蓄積されていく。「困りごと解決サービス」「不便解消サービス」「時間短縮サービス」。世の中に存在するすべの商品、サービス、ビジネスは大枠で捉えれば、これらの何れかに該当する。○○業、○○屋などの従来の業種業態枠で切ると無意識の枠に囲われて拡がらないが、「一番根源的に人がほしいもの、必要なものって結局何?」という枠なしの観点から視ると無限に拡がる。それらの表現を反転、リバースすれば「目的達成サービス」「利便性向上サービス」「長持ちサービス」にも拡がるし、そんな観点、感覚ならじゃあ、「資源増大サービス」「コスト削減サービス」、「お悩み解決サービス」「欲望サポートサービス」、「ストレス解消サービス」「頑張り負荷かけサポートサービス」、「劣等感解消サービス」「優越感充足サービス」・・・・・。すべて構造は同じで、ハコ「❒」の中身を入れ替えただけ。これらの表現を足したり引いたり、掛け算したり、段階化させたり、階層化させたり・・・・・

 形のないものを図形化させることが出来れば、人の心理、意思決定のプロセスも構造化図解出来るようになる。購買心理の意思決定プロセスの構造図解が出来れば、マーケットにおいての競合優位性は取りやすい。あるいはよく出てくるようなビジネスモデルの成功ケース、GEだの、ゴールドマンだの、スタバだの、アマゾンだの、トヨタだの、セブンだの・・・・・これら経営者の意思決定プロセス、事業理念、収益モデルなどの構造図解も可能になる。それが出来ればそれら巨人企業たちを自分で組み立て、作り上げる擬似体験をしたのと同じだ。

 現実では当然、お金集め、人集め、法律、妨害工作・・・・の制約要因にさらされ、実質的には純粋なビジネスモデルを創り上げることよりも、エネルギーの大半はそれら制約要因との闘いがメインにはなるので、その対応力、すなわち金脈、人脈、知識、工作力・・・がポイントになり、その力がなければ土俵には立てない。しかし、構造図解化、疑似体験が出来れば、ハコ「❒」の中身を入れ替えたスモール版なら、かなりリアルに創り上げることは可能になる。世界トップのビジネススクールでは、世界中からの選りすぐり超エリートに、こんなことを何回も疑似体験させてトップベンチャーを生み出している。まだ可能性のある子供たちは、まずはそこを目指すのが第一義だ。ですよね、お父さん?

2、「法則ルールの何が当てはまって何が当てはまらないのか、条件的に違うことはなんなのか、その違いがわかること」とは、あの成功した場面、もしくはあの失敗した場面でなせそうだったのか、その状況における前提条件としての「制約要因」「環境条件」「あの時とその時の違い」などが明らかに出来ているということ。

 これが明らかにできていない、区別できていない、明確化できていないと、「おれのやり方でいける」「あの時のこのノウハウさえ用いればまず外さない」となってしまい自身の成功体験にとらわれてしまう。そのやり方に固執しすぎると成果が続かない、成功度合いが薄くなっていく。なかなかそこから抜け出せず、業績が急落する、一時の繁栄で終わる、ゆるやかな右肩下がりに陥っていく。これを「成功の復讐」という。ケースごとにあてはまる、あてはまらないがあるにも関わらず、すべてあてはめようとしてしまう。この状態を「一般化の誤謬」という。

 「自分はこうやったらうまくいった」⇒「だからいつでもだれでもそうすればうまくいくはず」ではなく、「自分はあの時こうやったらうまくいった」⇒「それはこういう顧客に対し、こういう競合で、こういう経済環境だからうまくいった」⇒「今回はこういう顧客で、こういう競合で、こういう経済環境だから、ここは同じだが、ここは違う」⇒「だからここは通用するが、この部分は同じことをやってしまうとかえって害になってしまう。その部分はさあどうしたらいい?」というふうに考えられることを「条件の明確化」という。状況の客観化力、現状分析力が必要。

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