WEB戦略構築(48) WEB制作はなぜ失敗するのか?業者と向き合うにあたって(5) 「意識のレベルギャップ」 ~ 根本スタンス、ビジネスコミュニケーション能力
1、根本スタンス
2、ビジネスコミュニケーション能力
1、根本スタンス
根本スタンスとは、そのweb業者さんはご自身のことをどう認識しているか、という話。「うちは制作屋なんで」とか、「マーケターですね」とか、「コンサルティングです」とか・・・。「HP作成」とweb上で打ち出している業者さんたちに、作成の打診をして話を聞くと、それぞれそんなことを言ってくる。最終的にやることは同じでも、それぞれがどんな立ち位置で事に当たるのかで、その意味は全く別のことになる。ただ、それぞれが言う、制作屋、マーケター、コンサル・・・はそれぞれ何を指しているのか、そこはずいぶん怪しいという話だった。本人たちがどういう自己認識しているか、ということも無視できない論点だが、資力の無い依頼側としては、その人が落としどころとして、どこに力点を置いているか?そこが見抜けるようになれれば、大きな判断基準になる。
「落としどころの力点」とは、その人の潜在心理的に、無意識に最も意識ウエイトのかかっているところという意味。作成後の早い段階から成果を上げることか、今後の修正や管理も含めて長期の付き合いを求めるのか、作り手として納得いくものを創ろうとしているのか、引き渡したときに文句を言われないようにしたいのか・・・。まあ、いいものを作りたい、喜んでもらいたいという点では、すべて共通しているが、いくつかの軸を引いて切ってみると、その人が何を気にする人なのか、そのポジションは明確に違う。すべてをかなえようとは思うだろうが、本音の意識ウエイトの配分バランスは、性格タイプによって全く違う。
例えば、「相手」か「自分」かという軸、あるいは、「今」か「先」かという軸で切ってみる。相手軸の人なら、相手がどうしたがっているかを忠実に実現しようとするが、自分軸の人は、相手の望むことを受けて、自分としてはどうするとベストなのか、その納得を追求する。いいものを作る評価の高い人たちは、だいたい後者だろう。あるいは、相手側にとにかく、なにがしかのメリットを与えなかったら意味を感じない人なのか、もしくは、表面的にはお客様のメリットとは言うが、深層意識では、自分がミスをしない、文句を言われない、ということが主眼になっている人なのか。さらには、全体に対して責任を負おうとする人なのか、今、自分が悪くなければいい人なのか。この辺の軸は、責任に対して、「負ったことがある」か、もしくは「その経験がない」か。さらには、責任の質的に、「リアルな人を巻き込む大きな責任」か、もしくは「形式的な役割としての責任」か、という切り方になるだろう。「今」か「先」かという、時間軸の場合だと、「今」派は、引き渡し時点での反響、もしくは、数か月内の成果が落としどころだろうが、「先」派は、引き渡してからの成果測定で修正をかけ続けてどうなるか、さらには、その会社が結局どうなっていくか、までを想定しての提案を落としどころとする。
これらのことは、タイプ分析の話でもあるので、相手に口頭で確認しようとしても無意味だ。相手自身も顕在的に認識していない。その人の「今の立場」として、理想とされる定型的な回答しか返ってこない。別にうそをついているわけでも、だまそうとしているわけでも、悪気はない。しかし、こちら側にそういう意識を持ちながら、何度かコミュニケーションを取ってみれば、感じるものがある。
webサイトを作成する中で、web業者さんとの向き合い方という論点で語っているが、もちろんそれに収まるだけの話でもない。すべての業者さん、ビジネスパートナーとの間にも当てはまることだし、一番重要なとらえ方としては、対客に対する自分自身の潜在意識は、本当のところどうなんだろうか。ここに振り返ることが出来れば、メッセージ発信のことばが変わっていくかもしれない。自身のタイプ分析が出来るようになると、相手の本当のことが、少しずつ感じられるようになっていく。
2、ビジネスコミュニケーション能力
ここの論点は、今まで見てきた、客側と業者側の認識や意識のズレの数々に対して、その業者はそのズレを、解決しようとする意識を持っているかどうか、という話。以前、人事のテキストに、「コミニュケーション」と「ビジネスコミュニケーション」は別のこと、だという話があった。「コミニュケーション」は、一般的な認識の意味として。に対して、「ビジネスコミュニケーション」とは、ビジネスの場面の中で、業界の違い、組織の違い、部署の違い、役職の違い、キャリアの違い・・・など、あらゆる立場の違いの中に横たわる、専門用語、知識差、情報差、言語・表現の違い、認識の違い、常識の違い、価値観の違い・・・などの認識や意識のズレに対して、表現の工夫、ことば数を費やして、相互理解を試みようとすること。
業者と客の間のあらゆる乖離は、基本、どの業界にもあるが、「乖離が大きい」と、客側、業者側共にその認識がある業界と、そこまでもいかない業界とがある。意識の高い人は気づいているが、客側も業者側もそこまで意識もしておらず、しかしその代償として、客側に常に、慢性的な不満がある業界がある。乖離が大きいと認識を共有している業界は、その問題点の解決に向かおうとはする。しかし、特に問題視もしない、乖離の程度が顕在化すらしない業界は、何らの進展はない。なんとなく感じてはいるが、まあまあそれでまかり通ること幸いに、改善努力をしない。こういう業界が、人工知能など、破壊的イノベーションによって、全く別の枠組みに持っていかれる、ということになる。
web業界、の中の媒体制作業は、先端ITジャンルというより、旧態然の製造業体質に近い。専門職でもあるので、客との乖離程度も大きい。客との乖離が大きいという認識はあるように思う。が、ビジネスコミュニケーションに対する努力は、しているところと意識のないところの差が大きい。意識の高いところは、高い、忙しい。予算範囲で、ビジネスコミュニケーション意識の高い業者を見つけたい。どこに現れるかは、その会社のサイトと、面談時。で、この問題も、こちら側にそのビジネスコミュニケーションという意識がそもそもないと、相手側にその意識があり、伝えよう、理解させようと努力している人かどうかの区別がつかない。絶対数は少数派なので、見つけられない、取り合ってもらえないなど、意識のない業者と向き合わなければならない可能性のほうが高い。こちら側が意識をするしかない、かもしれない。
このことも、前テーマ同様翻って、自身が、対客に対してどうなのか、が重要な話。さらに言えば、このビジネスコミュニケーション問題の深刻な問題点は、対従業員に対しての部分だ。客や業者には意識しても、家族、身内、従業員には意識しない。もう、組織論はここでは触れないが、要は、自身がどの程度実践し、解消できているか、が他のすべてに通じる。
簡単に言ってしまっているが、ビジネスコミュニケーション能力に通じるには、能力的に相当なスキルを要する。まず、乖離、ズレを認識できなければならない。違いを認識できるということは、状況認識が的確であるということ。状況認識が的確であるためには、その前に状況分析力がいる。分析的にものを見るということは、常日頃からの訓練がいる。分析、比較してものが見れるということは、いろんなことをたくさん知っているということ。基礎的な知識量、情報量がまずはいる。で、それを表現する、表現スキルが不可欠。表現スキルは、ボキャブラリー量と、その言葉の組み合わせのセンスになる。国語力のこと。文章化したり、図解しないと伝わらないこともある。図解能力は、完全に訓練のいる特殊スキル。残念ながら、意識したとて、思うように意思疎通の壁を崩せるものでもない。要は、常日頃の読み書き習慣の問題。書いた量と費やした時間の総和。読んだ量と費やした時間の総和。