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税務・承継

オーナー経営者VS税制改正(4) 25年度改正内容・論点解説 01 ~少人数私募債01

 回からの続きで証券税制、金融所得課税の一体化関連から、「少人数私募債の利子所得が総合課税に」ついて、先記事の太字部分

 【 同族会社のオーナーが会社に金を貸して普通に利息を受ければ雑所得で総合課税されるところ私募債を発行して自らが利子を重け取る形にすれば,実質上同じものが利子所得になって20%源泉分離で済んでしまうもっと極端になると給与所得を利子所得に変えてしまう所得の分類・種類を変換してしまう道具として使われないように手当てしているのですね。ただし27年までに発行されたものについて駆込みができてしまうのは問題点ですね。】の部分について見ていきたいと思います。

この件での論点をまず整理すると、

 1、少人数私募債とは何か

 2、債券発行の節税効果

 3、少人数私募債の用例

 425年度の改正

 526年度の改正

ぐらいに分解して、とりあえず簡潔に見ていきたいと思います。

1、少人数私募債とは何か

 会社が資金調達する手段として、株式の発行と社債の発行があります。その社債の一種で、少人数から小規模でお金を集めるのが「少人数私募債」です。不特定多数の人から広く大規模に集めるものに対して、募集人数を49人以下に制限したものを指します。一般的な社債は発行に際して行政手続きなど複雑な手続きが必要なのに対して、少人数私募債は社内の取締役会での決議で発行が可能で簡易に発行できるとして、中小企業では広く一般的に活用されている手法です。49人とありますが実質はオーナー社長さん一人とか同族会社の株主、役員さん方が社債の引き受け手となるケースの話です。

2、債券発行の節税効果

 この少人数私募債の発行目的として、中小企業の現場では社債の本来の目的である、外部からの資金調達というよりは節税効果を狙ったものが多いようです。何が節税になるのかというと、金利支払の税解釈の部分の話です。社債は通常、償還(返済)に際して元本に金利を付して償還します。元本部分は資本取引としてP/L(損益計算書)上には反映されません。しかし金利部分は資金調達上の必要経として損金処理(売上からの引き算)が可能です。

逆に受け取る側にとっては単純に「金利」といっても、何の金利なのかによって所得の種類が違います。金銭消費貸借(一般的なお金の貸し借り)、貸付金の返済に伴う金利収入は「雑所得」となり、総合課税(その人の年間のすべての所得に対して該当する税率が適用)です。かたや社債の償還金利は「利子所得」となり、源泉20%(住民税込み)の分離課税(その人のトータルの所得に関係なくそれ単独での固定の税率が適用)です。高額所得者の人で総合課税50%(住民税込み)の税率がかかる人なら、雑所得になる貸付返済の金利収入にもその税率が係ることになります。しかし利子所得になる債券償還金利ならそれに関係なく20%です。ですのでここでいう節税とは法人側でもそうですが、むしろ社長個人の所得税の節税という側面での話です。

3、少人数私募債の用例

 中小企業の社長は社長個人の資産を会社につぎ込んだりします。通常増資と言うことで資本金として処理するところをそうはせず、会社への貸付、法人としては社長からの長期借入金としてB/S(貸借対照表)上に計上しているようなケースがあります。こういう場合も、法人側は元本部分の返済はさておき、金利部分の支払いを損金処理とし、社長側としては金利収入があるという構図が生じます。しかし上述したように、貸付の金利収入は総合課税で、通常社長の所得税率は20%以上で高率なので、法人の節税にはなっても個人の所得税が上がり、非効率です。

そこで、同じ社長の個人資産を会社につぎ込むにしても、単純に貸し付けるより私募債を発行して社債として貸し付ければ、その金利は法人としては同じ損金処理が可能で、かつ社長個人も利子所得として20%の税率で済むということです。

 であるならば、社長個人の収入を全体構成で捉えた時に、役員報酬と金利収入があるとするならば、年収うん千万の役員報酬ではとればとるほど税率は上がり、最高税率50%(課税所得1800万超)、さらにH27年以降は55%(課税所得4000万超)もの税金を献上することになります。それに対し、債券の金利収入であればうん千万であろうとも20%20%です。役員報酬を減らし、債券金利収入の比率を上げ、最適バランスをとろうとするのは当然といえば当然です。

425年度の改正

 そこで昨年、25年度の税制改正です。「同族会社における社債発行の利子所得をその役員が受け取るものに関しては総合課税とする」というものです。固定された20%の税率ではなくなってしまいました。ああえらいことです、というインパクトのある(ある人には)話でした。

相続税の改正をはじめ、この年の税制改正は結構なおおごとだった印象です。従来の枠組みが通用しなくなり、新たな知恵の開発が始まっています。

しかしこの件は、改正の適用が28年以降発行の社債発行に対するものとして、3年ほどの猶予期間も設けられてありました。伴い、駆け込み需要ならぬ駆け込み発行が、25年度中にもあったようにも聞きます。

ところが・・・

526年度の改正

 昨年12月の大綱にはなんと「少人数私募債の節税防止に係る改正」が発表され、「2811日以降に受け取る利子に適用される」と変更の改正内容でした。25年度では28年以降の「発行」でしたから、28年までに発行さえしておけば、その社債に係る利子は適用外だという解釈でした。

しかし、26年度では28年以降に「受け取る利子」とありますから、何年に発行していようとも関係ないということになります。完全なトラップ、後だしジャンケンです。税理士さん、中小企業オーナー等、関心のあるところでは騒然としています。正式な成立、公布は3月末ですから、まだ異議申し立てが出されるか、紛糾するような気もしますが、ここ最近の国家権力としての税の徴収に対するスタンスは相当強硬な意志を感じます。

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