オーナー経営者VS税制改正(1) 改正内容 01 ~25年度改正内容を改めて
中小企業経営者の方にとって影響の大きい税制改正が25年の改正でした。その際の改正項目が27年1月1日、および28年1月1日以降に適用されています。それらのことを意識しない限りは、なかなか知るよしもないことがほとんどかと思われます。自身の身に直面して初めて、「えっ、そうなの?!!」と驚嘆させられることの方が多いのではないでしょうか。
一体何がどう変わっているのか。改めてその内容を確認しておきたいと思います。
この25年の改正は、相続税元年などと言われた27年度から適用されている、相続税率の改正や贈与税などの改正も盛り込まれ、資産課税など、資産家層に対する影響が大幅に強化された年でした。個人所得課税のジャンルでは、「NISA」の創設なども盛り込まれインパクトの強めな内容が多かったため、陰に隠れるような形ですっと潜り込んでいますが、大~中小企業経営者にとっては最も影響があったのではないかと思われるのが、「金融所得課税の一体化の拡充」という内容のものです。
事業承継税制では、納税猶予など、税制に対して正攻法でいく方々にとっては、表面的には「飴」とも思えるような改正もありましたが、この時の「ムチ」、本丸はやはり、やりくり上手系の方々に対する抜け道の遮断、というのが、この「金融所得課税の一体化」だったのではないかという印象を受けます。
その主な中身のタイトルは、「公社債等課税の見直し」、「譲渡所得等の分離課税の改組」、「無価値化損失の見直し」という内容です。ざっくりとした内容はそれぞれ以下に。
「公社債等課税の見直し」
金融商品については、商品間の損益通算の範囲が制限されており、公社債等と上場株式等とで課税方式に差異がありました。平成28年1月以降、公社債等に対する課税方式が、上場株式等と同様、税率が20%(所得税15%、住民税5%)の申告分離課税方式に変更された上で、公社債等の譲渡益が非課税から課税とされる一方、損益通算できる範囲が公社債等にまで拡大されました。
「譲渡所得等の分離課税の改組」
株式等の譲渡所得等の分離課税制度について、上場株式と非上場株式とを区別し、別々の分離課税制度となり、以下のグループ分けとなりました。
(1)上場株式等の譲渡所得・配当所得と特定公社債の譲渡所得・利子所得
(2)非上場株式等の譲渡所得と一般公社債の譲渡所得
これまでは、上場株式と非上場株式の譲渡損益は、確定申告すれば通算できましたが、改正後は出来なくなりました。
「無価値化損失の見直し」
特定口座内で管理されている上場株式が倒産等により紙くずと化した際、譲渡損失として損益通算、譲渡損の繰越控除が可能ですが、債券のデフォルト等による無価値化損失は、従来家事費として処理されていたものが、改正により上場株式と同様に損益通算、繰越控除の対象として拡充されました。
税制のブラックボックスと言われるほど、複雑・不便な証券税制の利便性改善のために、「金融所得課税の一体化」が図られ、表面的には、個人投資家への投資促進に向けての改正という名目です。その一方で従来の節税スキームのいくつかのケースは封殺されることにもなりました。
改正大綱のその部分の表記だけ見ても、その具体的な影響は分かりにくいですが、主な点は
1、上場株式と債券の譲渡損益の損益通算が可能に
2、債券のデフォルト損失も損益通算の対象に
3、少人数私募債の利子所得が総合課税に
4、上場株式と非上場株式の譲渡損益の損益通算は不可に
これらの点について順次、法人オーナー目線で節税スキームを中心に見ていきたいと思います。