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事業承継スキーム(4) 役員退職金(1) ~退職所得控除、1/2課税、分離課税

事業を承継するに当たり、自社株式の引継ぎには、買取のためのキャッシュの必要性や税金によるキャッシュアウトが伴い、自社株式のねだん、評価額をいかに低く抑えて引き継ぐかがポイントであることを見てきました。評価の仕方には主に「純資産価額」方式(以後は「純資」と表記)と「類似業種比準価額」方式(以後は「類似」と表記)があり、それぞれの計算の仕方も見てきました。ということを前提とし、今までの内容を基本の理解としながら、以降は具体的な方法、スキームを見ていきたいと思います。

前回は「類似」を引き下げるには・・・、「純資」を引き下げるには・・・と事例を挙げましたが、実際にどの方法、スキームを選択するのかはもちろん、ただやみくもに株価を下げるだけのことをするわけではなく、まずは事業を引き継いでその後どうして行くのか、マーケット環境、後継者の能力等を勘案した承継後の経営計画・経営ビジョンを優先順位とし、現状の資産構成に基づいて株価を低く抑える方策を選択していくことになります。

会計知識の活用、不動産や生命保険の活用とそのベースは税法の工夫になりますが、株式であれば会社法もからみ、それと当然、事業の承継、株の承継は相続の問題でもあり、相続対策は実務的には一体として考慮していくことになりますので民法の話にもなります。顧問の税理士先生だけでなく、弁護士さん、司法書士さん、不動産鑑定士さん、不動産業者、生保業者、必要な専門ジャンルも多岐にわたり、登場人物も多くなります。

という側面も含めつつ、対処策、スキームを見ていきたいと思います。まずは最もシンプルかつベターな方法として「役員退職金の支給」がありますが、対策うんぬん以前に、先代のオーナーが引退する際には当然退職金を取ることになると思われます。そもそもの退職金の税メリットから含めて見ていきたいと思います。

「役員退職金の支給」

退職金といってもオーナー一族や役員等、執行部側が支給を受けるその退職金と、従業員に支給するその退職金は、関わる専門領域や資金使途の目的、主旨が基本的に違うので、ここでは区別して別のこととして捕らえます。事業承継、株の承継のテーマには従業員退職金は直接的には関係ないので割愛します。

まず基本として退職金の税メリットを押えておきますと、退職金は所得税のうちの「退職所得」に該当し、退職所得はあらゆる所得の中でも最も税メリットのある所得になります。所得の主旨からしても、今後の老後の生活資金という理解の下、税金での引き算が最も優しいことになります。そのメリットは3点有り、1、退職所得控除、21/2課税、3、分離課税となります。

1、退職所得控除

支給を受けた金額からまず課税金額の前に引き算が出来ます。計算式は

 ・勤続年数20年以下・・・40万円×勤続年数
 ・勤続年数21年超・・・800万円+70万円×勤続年数-20年)

)勤続30年なら支給額から1,500万の引き算が出来るということです。

21/2課税

1で引き算した金額をさらに1/2にし、その金額に税率をかけた額が税額になります。

3、分離課税

退職所得は分離課税、つまりその年の他の所得とは関係なしに単独で計算できるということです。

5,000万のお金を役員年間報酬で受け取るか、退職金として受け取るかでは、概算で1,500万ぐらい変わります。

以上が受け取った個人としての所得税メリットです。会社としては退職金の支給ですから支給したお金は損金処理となります。この点で一つ、役員への支給の場合は損金処理をしていい金額に制限が設けられています。その計算式は ・最終報酬月額×役員在位年数×功績倍率  までとなり、報酬が150万、30年在位の社長なら13,500(功績倍率3として※功績倍率については別の機会に)までとなります。これらの退職金支給額や損金限度額が税務署に否認されないためにも、まずは社内における「退職金規定」をきちんと定め、書面化しておく必要性があります。

で、株価の引下効果としては、利益のある会社であれば、大きな損金額になるので相殺効果が出ます。株価も「類似」で見たように利益の部分が大きいと株価が高くなるわけですから、その抑制効果も出ます。

利益もそんなに無く配当もしていなければ比準要素が1となり、「純資」比率が高くなりますが、総資産額が高い場合、退職金支給によって総資産額の減少につながれば「純資」の株価も低くなります。

ですので通常一般的に、先代オーナーが引退時に退職金を受け取って、そのタイミングに株も承継するというのが最も普通のケースかと思われます。

補足的に2点ほど「引退の定義」と「退職金原資の準備方法」について述べると、まず「引退」についてですが、実際にまるまる退いた場合はなんら問題はないのですが、取引先の手前、会長職など非常勤の役員として残る場合、次の要件を満たさないと「引退」とは認められず、退職金の支給は「退職金」にならず役員賞与となり、退職所得メリットもなし、損金処理もダメとなりとんでもな

い一大事となります。 ・分掌変更後の役員報酬が概ね50%以上の減少 ・分掌変更後、法人経営上の主要な地位を占め  ていないと認められること

役員報酬の減少は容易でしょうが、「経営上の主要な地位」は解釈の難しいところかもわかりません。自社株を承継せず筆頭株主のままであったり、役員会にも出席し、重要な決定にその意見、意向が反映しているとみなされるとダメのようです。息子の経営についつい口を出すというのは微妙なようです。

もう一つ「退職金原資の準備方法」は法人資産の現預金、有価証券、不動産譲渡、借入、生命保険が選択肢になります。「生命保険」は死亡退職金の意味だけではなく、通常の生存退職金も含みます。そしてこれらの選択肢の中で、税メリットの高いのが生命保険であり、通常一般的に最も用いられている方法が実はこの「生命保険」になります。生命保険での積立、「解約返戻金」を活用す

るという方法です。

「税の繰り延べに過ぎない」など、生命保険の何が有利なのかが以外に理解されていないことが多いので、次回、改めて法人における生命保険の税メリット、および退職金原資の準備における優位性について見ていきたいと思います。

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