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事業承継スキーム(6) 持株会社(1) ~ホールディングス活用の概要

事業を承継するに当たり、自社株式の引継ぎには、買取のためのキャッシュの必要性や税金によるキャッシュアウトが伴い、自社株式のねだん、評価額をいかに低く抑えて引き継ぐかがポイントであることを見てきました。評価の仕方には主に「純資産価額」方式(以後は「純資」と表記)と「類似業種比準価額」方式(以後は「類似」と表記)があり、それぞれの計算の仕方も見てきました。ということを前提とし、今までの内容を基本の理解としながら、以降は具体的な方法、スキームを見ていきたいと思います。具体手法、スキームの一つとして、まずはスタンダードな方法として「退職金支給」を見ました。さらにその際に有効なツールとして「生命保険」の活用と税メリットを前回は見ました。

同様に、スキームうんぬんの前にもっと基本的なやるべきことはさまざまありますが、半年以上、前提の話ばかりになっており、本題に入れませんので、そもそものテーマであった「持株会社」スキームを今回は見ていきたいと思います。不動産活用のスキームなども触れていく予定で、あまりそれぞれを深掘りすると際限が無いので、まずは一通りのスキームの概要だけでも見ていければと思います。

「持株会社」スキームとは要は、会社の評価額、つまり株価を低く抑えて次の人に事業承継する為の節税の一つの方法です。会社の株の所有形態を二重にして評価を落とす方法です。二重にするとは会社(法人)を二つにし、一方の会社がもう一方の会社の株を所有し、そしてその会社の株をオーナーが所有するという形態です。いわゆる「ホールディングス」 というやつです。将来的に評価を落とす方策を敷いておいて、その株を引き継ぐ方法やタイミングを検討します。

事業承継の為のスキームというよりは、大企業などが会社が成長し、各事業部レベルを分社、子会社化していったような場合に、すべてを統括する機能として、本体や子会社の株式を保有する為に設けられることが一般的です。しかし、その根底にあることは、株価評価の問題であり、株主オーナーの相続対策でもあるので、一定規模以上の中小企業でも検討される方法です。

事業承継の必要性に迫られて、喫緊にこの持株会社スキームを採用しても、資産構成の点で思うような効果が得られないケースもあったり、もしくは、株価の評価を引き下げる、まさしくその為だけに何がしかの組織再編成や資産移転を行なったな、と見受けられてしまうと、そもそもの行為は否認されてしまうので、結構な長期視点で採られる方法です。

ですので、先代も後継者もまだ若いか、もしくは後継の目処が立ってない等、時間的猶予が有る場合、かつ今後も会社の成長が著しく見込まれ、株価の高騰が予想され、何がしかの対策は必要な場合の方法です。

このような方法がなぜ株価が低くなるのか、適用されるルール、税制はどういうものになるのか、何に留意しなければならないのか等を見ていきたいと思います。が、さすがにこのあたりのテーマになりますと、論点や検討項目が多岐にわたり、かつ税法の中でも複雑な論点も含まれるので、表面をなぞるような形で触れていきたいと思います。

このスキームでまず取り上げられる論点は「含み益控除」です。その他、株価評価が純資か類似か、株特はずし対策、または株式移転の方法、適格か非適格か、時価か簿価か、適格要件維持、譲渡損益の繰延、繰越欠損金の利用制限、分割・譲渡・現物分配等々の組織再編税制、会社法法務、そして採択する方法、株式の所有状況によっては非上場株の「時価の壁」等の難問も絡んできます。

まずは比較的易しめな論点である「含み益控除から」見ていきたいと思いますが、続きは次回に。

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