事業承継スキーム(15) 賃貸不動産(2) ~貸宅地、借地権
貸宅地、借地権
先回からテーマが不動産について取り上げています。資産価値の評価方法について、まずは基本となる「自用地」「貸宅地」「貸家建付地」の「土地」の計算式から。
「自用地」の次は「貸宅地」。計算式は 「貸宅地=自用地評価額×(1-借地権割合)」 となります。
「借地権」について。字の通り土地を借りる権利。権利というより「権利」という、借りている人側の資産価値。地主と実際に土地を使用している人が違う場合、その土地の資産としての価値を、持ち主と使用する人で分配する感覚。相続発生時にも貸してる状態であれば、相続財産としての価値はその貸している「借地権」の分だけ引きさがる(自用地額から借地権の割合を引いて評価する)、ということ。
「借地権割合」は先回、路線価の説明の際に少し触れましたが、その土地の接している道路ごとに公的に決められていて、A90%~G30%までのアルファベット表記されています。相続の際の土地の財産評価をする場合は、この路線価図の路線価と借地権割合を用います。
通常、借地権の設定に伴って権利金の授受が発生します。借りる側が最初に権利金を支払って借地権を設定するか、もしくは借地権を設定せずに賃貸契約で定期的に地代を払っていくか、その場合は借地権の設定はありませんので、地主の土地の評価の際は借地権割合を引かずに計算されます。しかし土地を貸していて自分で使っていないのでその場合は 「自用地評価額×80%」
となります。
同様に、権利金も地代も払わずに借りる場合は事前に税務署に「無償返還届」を提出する必要があります。この場合も地主の土地の財産評価は 「自用地評価額×80%」 となります。「無償返還届」を出しておかないと、地主は受け取っていなくても権利金の授受があったとして課税がかかりますし、借りた側も最後の相続財産評価で借地権分を加算されるということになります。
借地権には存続期間、借りていられる期間が定められており、その要件区分がかなり複雑です。h4/8/1以前か以降か、その土地の上に建てられる建物の非堅個(木造)か堅個(木造以外)か、あるいは存続期間後に更新が出来るか出来ないか、それぞれに年数が決められています。で、この存続期間到来したとき、建物はどうするのか。
などなど、借地権には課題が多いので、昔から名義や権利うんぬんなしに家を建てていたような自然発生的なパターン以外、他人同士が借地権を設定したりや地代を払って借りると言うようなことは考えにくいかと思われます。今どきですとデベロッパーがマンションやテナント建設の為に底地から買い取るか、等価交換を提案するかと言うことになるかと思います。
しかしそれもあくまでも、業者もしくは投資家にとって投資採算性のある場所に限られるので、実態としてはほぼ、地主自身が相続財産評価の引き下げの為に、賃貸経営をするか、同族会社の法人を立ち上げて賃貸経営をするか、というパターンになるかと思われます。
ですので、このテーマのトピックスでは、1、地主個人名義で賃貸経営をした場合、2、同族法人化して賃貸経営をした場合、3、他者と借地権設定した場合にそれぞれ相続財産評価はどうなるのかを見ていきたいと思います。
さらには2の場合、2-1、借地権を設定するのか、2-2、相当の地代を支払うのか、2-3、無償返還届を提出しておくのか、逆にもっと根本的に、賃貸経営そのものを考える際の目的は何かによっては、a、広大地評価の観点や、b、同族法人の株価の観点、c、賃貸経営時の借入金の観点など、主要な留意点も見ていきたいと思います。
「貸宅地」の次は「貸家建付地」。計算式は 「貸家建付地=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合)」
となります。「借家権割合」とは。
次回は「貸家建付地」の公式から見ていきたいと思います。