「大阪都構想の住民投票」をロジカルに斬ってみよう(2)
ハシズム
そもそも本当に必要な重大な政策なら民意を直接問わずに、上意下達される。基本、本当に重要ならプロ同士の中で話を進めるのが政治。反対勢力が多く、根回しや数の工作がうまくいかないということは、利権の問題もさることながら、表むき堂々と反対を表明できる、政策的、道義的、論理的反対意見が成り立ってしまう証拠。反対しづらい論理的根拠すら詰めきれていない。工作も、まっとうな正論でも勝負できなかったからと言って、情報も見識も薄い一般市民を巻き込むしかなく、こじつけと勢いで住民投票へ持ち込むのは危険なずるさしか感じない。オープンで公明正大などではない。政治的無能であり、それは扇動者とか運動家と言う。
橋下氏はまさしくこちらの人だ。こういう人材は日本ではなかなかいないので、重宝される。マスメディアは数字が取れれば、興味を引ける間は露出を増やす。テレビでたくさん見かければ、一般市民にとっては有名人であり、スターだ。政策の中身は置き去りに、人気や知名度を頼りに大衆を扇動する。
「大阪市をぶっこわす」と仮想の敵をつくり、民意をあおり、己の意のままにことを運ぼうとする。これを一般的に広義の意味での「ファシズム」という。確かに橋下氏は、もじって「ハシズム」といわれていた。そのときには人々は熱狂するが、後世の歴史評価でこの手の政治家がいいイメージで残っているケースは少ない。自分でも「危険だ」と、承知でやっていた。
客観的な真実
なぜこんなでたらめに近い住民投票を行なったのか?それが何よりも最大の疑問だ。この論争の背景にある客観的な真実をいくつか追ってみよう。
1、財政面
まずは大阪府と大阪市の財政はどうなのか? まず市の財政、債務はどうなっているか?
2002年時4.7兆円、 2005年時5.5兆円(増大)、 2011年時5兆円(平松市政で縮小)、 2014年時4.7兆円(橋下市政でも縮小)。
かたや府の財政、債務はどうなっているか?
2003年時5.6兆円、 2008年時5.8兆円(5年で0.2兆増)、 2011年時6兆円(橋下府政で0.2兆増)、 2013年時6.4兆円(松井府政で0.4兆円増)。
府も市も危険には違いないが、大阪市は平松氏以降一貫して減少。うめきたやハルカスなどの開発を進めながらも減ってはいる。政令市であるがゆえ。橋下氏も市政ではゴリゴリと強引にムダの解消を強行。敵だらけになる。
一方大阪府は橋下松井の維新府政の5年間に、それ以前5年間から増加分の額が3倍に悪化している。特に松井府政以降。大阪府は辺境地域ではまだまだ道路や下水道でさえ未整備。現在大阪府は「起債許可団体」に国から指定されている。破綻危険水域に有り、これ以上負債を増やすには国からの許可が必要だということ。ここに、今回の都構想の強行の理由が垣間見える。
国としては、政令市のような地方の強い権限は少ないほうがよく、都道府県の破綻懸念先は解消されないと困る。松井府政でなにゆえそんなに悪化が進んでいるのか、理由がよく分からない。松井氏の支持者、背景的なことが何かあるのかしら?と邪推してしまう。できるだけ目立たないよう、隠す為の隠れみので橋下氏は目立っているのか?目立たされているのか?
都構想が可決され大阪「市」が無くなると、今までの「市」の財源は「府」で一元化される。市域での歳入8000億のうち2000億は府域で自由に出来る財源になるという。なるほど、それで債務の返済と辺境地域の道路と下水道の整備をするということのようだ。それはそれで良いも悪いもないだろうが、普通に推測して大阪の中心部の開発、発展は停滞するのではないか。関西全体の心臓部、エンジンの力が弱まれば、結局大阪全体、ひいては関西全体は停滞するのでは?普通に考えて、府を立て直すために犠牲にするデメリットのほうがはるかに大きい。
2、橋下ブレイン、維新の会支持者、の側面
あと、言われているのは市営地下鉄の民営化、市水道局の民営化、湾岸部の国際会議場とそして、「カジノ」。これらの利権を狙ってらっしゃる方々は橋下ブレイン、維新の支持者の方たちのようだ。維新によればこれらは、大阪の発展、世界中から人、物、金を呼び込む原動力とか。完全否定もしにくいが、利権がらみでない、中立客観、大所高所の観点からのコンサルタント目線、評論家目線で言えば、一時的、部分的には有効だが、根本的な論点、施策がずれている。東京ではなくて大阪でなくてはならない理由が作れていない限り、長期にわたって世界中からの投資を呼び込むことは難しい、が正解。あれだけ称賛されたシンガポールカジノでさえ、中国の景気一つでその余波は大きいようだ。で、そもそもこれらのことは手段であって目的ではない。手段の先行、手段の目的化の見本のような話だ。絡む人にとってはやはり露骨に、手段が目的になっている。 (続く)