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業績向上人事(2) 人事の誤解と対策(2) 自社成長モデルの制度化

4、評価制度は今までやってきたことを制度化する

 人事制度のセミナーは不動の人気を誇っている。社員アンケートの関心事テーマでも常に上位に入る話題だ。多くの社長は「素晴らしい人事制度」を常に探している。最新の人事制度、他社の成功事例の中から「魔法の杖」を探そうとする。専門コンサルタントに依頼する費用は、50人くらいの会社で500万ぐらいからかかる。もう少し小規模でも数百万はくだらないのが相場だ。しかし機能しているとは言えない状況が多い。弊害は無くとも、費用対効果のバランスの悪いジャンルだ。ではなぜ皆やろうとするのか?多くの社員が不満を持っているし、報酬の制度が会社の業績に反映しないことも困っている。しかしどうしていいかその方法が複雑すぎて、自分たちで制度構築するのは無理だ、という認識がそこにはある。会社としても、簡単すぎても社員の不満を助長しかねないし、業者としてもある程度の複雑さを維持しないと数百万も請求しにくい。

 社員30名の甲社。社長が5cmほどの厚いファイルを持ってきた。「人事制度」のファイルだ。

コンサル「立派なものをおつくりになりましたね」

甲社長 「随分、費用と時間をかけましたよ」

コンサル「全部読んで理解するのに大変でしたでしょ」

甲社長 「いやとても全部読んでないんですよ」

コンサル「いつ作られたんですか」

甲社長 「1年以上経つかなあ」

コンサル「社員さんには渡してらっしゃるんですか」

甲社長 「いえいえ、作ったことすら知りませんよ」

コンサル「総務の方は把握してらっしゃるんですよね」

甲社長 「いえこれはだれにも見せてません。給与事務はソフトに打ち込むだけですから」

コンサル「・・・・・」

 概ね、どこの会社も同じようなものである。読めもしないほど難しいものを作って、とても運用できるはずはない。理解できないものを活用して納得させるのは不可能だ。理解をあきらめさせ、煙に巻いてしまうには非常に有効だ。数百万かけても、社員の満足、業績への反映、会社の成長と人事制度はまったく別のことになっているのが実態だ。リンクなどとてもしていない。目的と手段があっていない。戦略と戦術は完全に不一致だ。シンプルに反映するしくみを目指したい。

 起業当初はどうだったのだろうか。成長したということは何がしかのしくみが機能していた、ということではないだろうか。当然複雑な制度はないはずだ。起業当初数人の頃の独特のマインドがそうさせた、というだけの話ではないはずだ。報酬は払っていたのだから。やめずに頑張り続けてくれている人もいるのだから。この頃は何をどうしていたのだろうか?ここにヒントを見出せるのではないか。業務全般において、基本その都度一緒に話し合ってきただろうし、小さな成果でも喜び合って、ほめて、たたえて、おだてただろうし。信頼して任せただろうし、飲みに連れて行っただろうし、細かな悩みに耳を傾けただろうし、会社の業績や成長以上にまずは従業員の成長を一番の目的にしてきただろうし。従業員から見ても、社長の意図するところを汲もうとしただろうし、頭の中が良く見えただろうし、感情も見えただろうし、喜んで欲しかっただろうし、ほめて欲しかっただろうし。会社の業績や成長と自分の喜びが一体だっただろうし。

 起業当初に見られる当たり前の風景を並べただけではない。これらのことがすべて「しくみとして機能していた」と、まずは捉えられるかどうかがポイントだ。これらの風景を表面的な事柄だけ真似をしようとしても、成長し、人も増えた今日に至っては、意味の違うこととして機能し、多くのことは通用しないだろう。しかしそこに貫かれている心理的な背景を汲み取り、新たな表現、事柄に落とし込んでいくことに鍵がある。人事制度の原点は「人を成長させる為のしくみ」である。会社の業績数値やコスト削減の意図を組み込もうとしすぎて、複雑になりすぎ、そして機能しなくなってしまった。まずは目的と手段を見直すことが必要である。社長の頭の中、望むべき「人の成長のかたち」をだれが見てもわかるようにし、だれが見ても評価基準や解釈が一致し、納得ができる。それを表現し、しくみにするのが人事制度である。「起業当初にやってきたこと」の焼き直しである。

5、期待像(あるべき姿)は?

 社員は社長の評価基準に基づいて成長していくことになる。今おかれている現実の環境に適応して生きるのが動物の根本的な宿命なので。社長が思うように社員が育っていないとしたら、社長の発するメッセージが思っていることと違うことになっているということ。示している評価基準から現実につくり出されている環境が、違うことになっているということである。思っていることと、発するメッセージの解釈、評価基準の解釈がずれてしまっているのである。そんなつもりはまったく無いのにそうなっているので、通常、この気づきと修正はなかなか難しい。なぜこうなるのかは、単純に考えれば、複数の目的が混在し、ベクトルの向きが違ういくつかの方向性が入り混じってしまっていることが考えられる。ロジカルシンキングのロジックツリーを活用して整理する必要があるが、そちらから入ると先に進まないので、まずは制度の概要、たたき台を作ってから、見直す、運用しながら修正をかけていき、制度そのものを育てていく、というスタンスで話を進めていきたい。

 ロジカルシンキング的な理論構築の整理以前に、そもそも、人事制度や評価基準と社員の成長の絵姿とはほぼリンクをしていない、そんな意識で制度構築していない、ということが問題だ、というのがここまでの流れなので、まずはその整合性を一致させるということの話から。なので最初に考えることはまず、

 ①社員にどのように成長して欲しいか、その「期待像」「あるべき絵姿」を具体的、鮮明に言葉表現に落とし込む

ことである。次に、

 ②その進捗度合いに対し、どう処遇してあげたいか、「ポジション供与」「報酬賃金」とのリンクした制度設計

をしていく。まずは①を確立することが何よりも優先されることである。それに②を当てはめ、制度のたたき台をつくり、

 ③全員の納得度の検証。ポジョンや賃金額面の個人的満足度を追求するのでなく、評価者の客観性、妥当性、的確性をどう示すのか、評価者への納得度

 ④売上業績へのリンク度合い。成績を上げたら賃金額面が上がるのではなく、個人の「期待像」「あるべき絵姿」への到達度=全社売上となるリンク度合い

などを検証していく。その後運用をしていきながら、

 ⑤実際にみんなはどう感じ、業績にはどう反映しているのか、のフィードバック、修正

を毎年、毎年見直していく。という、大変手間ひまのかかる育成作業である。業者に外注する、制度を付け替える、ではやはり無理がある。よく「労働分配率」が適正かということが言われ、その数値基準を先に決めてから制度設計を始めようとするが、厳密に言えばカテゴリーが違う。これは財務戦略上、意図がある場合に何%に押さえたいのか、その適正度合いを見るのであり、社員の納得や成長を目的とするにあたり、最初に持ち出す論点ではない。この辺りからそもそも目的と論点がずれている。

続く

(「成果主義人事制度をつくる」引用、参照)

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