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経営を学ぶとは(5) 「経営」とは03 ~天の将に大任を是の人に降さんとするや

 孟子は言っている。

  「天の将(まさ)に大任(たいにん)を是の人に降さんとするや
   必ず先ずその心志(しんし)を苦しめ、その筋骨を労せしめ、
   その体膚(たいふ)を餓えしめ、その身を空乏(くうぼう)にし、
   行いには其の為す所を払乱(ふつらん)せしむ。
   心を動かし、性を忍び、其の能(よ)くせざる所を
   曾益(ぞうえき)せしむる所以(ゆえん)なり。」

<現代語訳>
 天がこの人を、世の中の人のためにひと働きさせたいと思ったときは、まず、その人の精神を苦しめるようなことを起こす。過酷な労働を強いて、疲労困ぱいさせてしまう。それで投げ出すような人には、任せられない。

 とにかく、食べられないような状況や、 収入が絶たれるような状況をつくってみる。 それに耐え、我慢できるなら、やってもやっても、成果が出ない状況に追い込む。それでも志を失わないかどうかを見る。

 いろいろと計画しても、全部うまくいかない状態をつくって、 それでも潰れないかどうかをみる。とにかく、 それでも頑張って辛抱強く、その出来ないというところを、出来るようにしていく。そういう困難に打ち克ってこそ、いままで出来なかったことが、 出来るようになっていく。
<訳終わり>

 人は失敗して初めて反省する。心が苦悩し初めて、これではいかんと奮起する。しんどすぎて、なりふりも構わなくなって、初めて悟る。どの程度の耐性があるかを、他人や世間でなく、天が試しているのだと。影響力の大きい重要な責務はそれを負える人でないと無理だ。この人で大丈夫かどうか色々試験がある。大きな組織やハイレベルな組織の一員になる場合は、その組織内に査定の仕組み、試験がある。独立起業家、経営者には客観的な試験はない。投資家や金融機関の審査では、その人の耐性や内在する器の大きさや徳性などは見ない。その代わり天からの試験という風に、歴史の偉人や大経営者の方々はそう受け止め、自身を奮い起こしてきたのだと。遭遇する無理・ 難題をよく見れば、それはすべてその人にとって、解決可能な問題ばかり。逆境は、自らに課せられた試験。この試験に耐え、乗り越えた時、独自資源としての能力、自信、胆力、オーラ、信頼などを獲得する。素晴らしい経営者の方は低姿勢なのに、みなぎる自身とあふれるオーラをまとっているのはこういうことなのだ。

 「経営を学ぶ」とは何か。「格物」「致知」のプロセスを乗り越えた者にだけその資格が与えられる、真理の実践である。

 お金は人の心理の表象である。「お金」とは何か、はまた別の機会に。

 「真理」は「心理」に通じる。そこを超えないとマーケティング(市場心理)はいくら学んでも難しい。従業員教育はとどのつまるところ人心掌握、すなわち「心理マネジメント」である。

 「真理」に通じる為には、いくつかのハードルを超えることは避けられない。志の高さとハードルの高さは比例する。

(一区切り)

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