事業モデル(再)構築 ・ 顧客育成のしくみ創り(8) 「定着客フェーズ(リテンションモデル別解)」(5) ~ 物理的拘束「選択肢を断つ」、発展する経済システムの条件(「お金2.0」より)
1、「逃がさない」囲い込み2 ~ 物理的拘束
2、物理的拘束1 ~ 「1回決めると変えられない」
3、物理的拘束2 ~ 「そうでないと損する」
4、 YaHoo経済圏のYaHoo人に引きずり込まれていき、選択肢を断たれ、損したくない心理に付け込まれ、抜きも刺しもならなくなり、完全包囲された事例
5、先の事例を、「発展する経済システムの5要素」にもあてはめてみて
5-1、発展する経済システムの5要素
5-2、その経済システムを持続可能にする2要素
5-3、YaHoo経済圏で見てみれば
6、「逃がさない」囲い込み・まとめ ~ 組み合わせて施策化
1、「逃がさない」囲い込み2 ~ 物理的拘束
逃がさない囲い込みの施策のもう1つの大分類、「物理的拘束」の方を見ていく。物理的拘束も心理的拘束も、もうそうじゃないと困るように、逃がさない、囲い込んでいく、という目的自体は同じだか、物理的拘束は、物理的に選択肢自体を断っていく、というようなイメージの話。こちらもさらに2つに分類した。「1回決めると変えられない」と、「そうでないと損する」と。
2、物理的拘束1 ~ 「1回決めると変えられない」
まず「1回決めると変えられない」の方から。最初の意思決定の段階から、AかBかの選択肢が定められていて、どっちにしますか?とあって、1回決めると後々変えられない、というような状況の話ではない。どのようにでも自由に選べる自由意志、豊富な選択肢が用意されている状況、むしろ無尽蔵に選択肢がある状況で、このことがおこる。ビジネス用語でいうところの「スイッチングコスト」の話。潤沢で魅力的な選択肢が並ぶ中で、どれにしたらいいかわからないからとりあえずそれをやってみて、その状況や様子でまた後で変えたらいい、と思って始めたこと。しかしそれをするに覚えなければならないこと、設定しなければならないこと、それに合わせて変えなければならないこと、慣れるまでに費やす時間、エネルギー、使い続けた履歴、それで固定してしまったパターン、生活スタイル・・・。また後で変えたらいいと思ってスタートしたはずなのに、いざ変えようと思うと、それに伴って何もかも変えざるを得なくなる。新たに覚えなければならないこと、新たに設定し直さなければならない大量の2度手間、積み重ねの何もかもがゼロになる・・・。こうなると、もう変えられない。変える際に要する、時間、手間暇、面倒、費用、そして精神的負担・・・。これらのことをスイッチングコストという。スイッチングコストが高くなると、変えられない。変えさせないために、いかにスイッチングコストを高くするか、という話。
3、物理的拘束2 ~ 「そうでないと損する」
「そうでないと損する」ほうは、スイッチングコストの中の、それまでに積み重ねた部分や一旦獲得した権利を、手放さなければならなくし、その損失回避の心理に着目していく話。「1回決めると変えられない」の方は、スイッチングコストを高くしていこうとする能動的な働きかけなのに対して、こちらの「そうでないと損する」方は、積極選択してもらいにくい状況などで、「変えちゃうと損するよ」という心理を突いていく、消極的な守り感覚の戦法。同じ分量のものを獲得して、「得した」と思う心理に対して、同じ分量のものを損する時の「損した」と思う心理負担の大きさは、2倍以上になるという例のあの話。行動経済学で言うところの損失回避の法則、「プロスペクト理論」の応用だ。ネガティブないやらしい作戦のようだが、心理作戦としては極めて固い攻め口。スイッチングコストを高めていく方向は、やはり小規模弱小事業ではなかなかハードルが高いが、こちらであれば人類普遍の法則であり、相手が勝手に「損したくない」と思って勝手に思いとどまっていく。ケチな人や、コストにやかましい人は、最初の選択にはなかなか手厳しいが、一旦積み重なっていくものや、獲得した権利があれば「もったいない」心理は絶大だし、次の選択にまた余計なコスト、費用がかかる際などにも動かない。一見手強そうなこの人たちは、きわめてカモりやすい。ポイントカードのハンコ程度では弱いだろうけど。
いずれの方法でも何を以て具体的に、スイッチングコストを高めていくのか、手放すにもったいないと思わせる、何を積み重ねさせ、権利を与えていくのか。「物理的」拘束と言っているのに、抽象的すぎてわかりにくい。一度事例ベースで見てみよう。YaHoo経済圏のYaHoo人に引きずり込まれていき、選択肢を断たれ、損したくない心理に付け込まれ、抜きも刺しもならなくなり、完全包囲された話。企業規模、包囲していく選択肢の規模が大きすぎて弱小事業には模倣出来ないが、楽天人かAmazon人か、だれしも経験のあるところでわかりやすく実感もしやすいと思うので、アイデアを何かつなげられないか。
4、 YaHoo経済圏のYaHoo人に引きずり込まれていき、選択肢を断たれ、損したくない心理に付け込まれ、抜きも刺しもならなくなり、完全包囲された事例
一番初めのとっかかりは、インターネット回線のところまでさかのぼる。ソフトバンクのスマホが入り口だったのではない。ネット回線はどれが良いか、当時は動画を見るなどというのもまだ一般的ではなく、ネット検索さえできればいい。どの方法が最もランニングコストが安いのか?から始まった。ケチ人の典型的な問題提起だ。当時はまだフレッツ光は高かったし、J:COMもまだマンション回線の標準ではなかったし、EO光はなかった。どの家にも固定電話回線はあり、携帯だけという家庭はまだ少なかったので、その電話回線を利用したADSLが主流だった。光回線へ移行期であり、フレッツの畳みかけがすさまじく、ADSLも時々フリーズするといったような状況だったので、フレッツ光で決めかけたまさにその時、YaHooのADSLキャンペーンにつかまった。「今なら、未来永劫、何年たってもずっと2,000円」と。しかし、光回線は速さが格段に違うという触れ込みが引っかかっており、どの程度違うものかを調べたところ、回線速度の最大のポイントは「基地局からの距離」であることがわかり、そうすると光回線であろうが、ADSLであろうが大した差はないことが判明した。回線事業者としては、いつまでもADSLにしがまれてもインフラ改革が進まなかったのだろうが、ケチ人にとってはそんなことは関係ない。光回線なんて半ば詐欺だ、との認識のもとYaHoo ADSLに決した。危うくNTTに乗せられるところだったが、そんな簡単には引っかからない。こちとらちぃと手強いですけど、などと思っている。が、このケチ人特有の性状は心理マーケティング上、最もカモられやすいパターンだということが判明するのは、その後何年も経ってからのことになる。
回線をYaHooにするということはすなわち、プロバイダーもYaHooに限定されていた。無料ポータルのYahooではなく、YBBというプロバイダー名で、パソコンメールアドレスのドメインが「ybb」となる。今回のケースでは、この「メールアドレスのドメイン」が、「1回決めるともう変えられない」状況を作ったと言える。一般的にはこの状況は携帯電話に見られるだろう。番号自体はポタービリティ制度の普及により、他のキャリアでも機種変更可能だが、携帯メールアドレスが変えられずに、結局キャリアが変えられないということが一般的だった。この状況及び、携帯進化の真っただ中にあって、携帯は頻繁に変えざるを得ないとの想定から、ビジネス、プライベート問わず、メール連絡のメイン手段としてパソコンメールを特定するに至る。パソコンメールの場合、パソコン上で登録、設定するすべてのことに登録が必要になる。銀行、クレカ、保険、光熱、通信、取引先・・・などの重要なものから、資料請求、問合せ、無料登録・・・まで、生きていることのあらゆるすべての通信接点が、このパソコンメールに集約されることになる。一般的な法人企業であれば、ほぼフレッツ光ということになるが、プロバイダーにはbiglobeだけでなく、多少の選択肢はあるか、アドレスドメイン自体はセキュリティの観点からも、企業HPのサーバー事業者で自社名ドメインを取得することが一般的だ。「1回決めるともう変えられない」象徴的なものダントツ1位は、HPサーバーだろう。話の流れからは脱線するので、この点については後ほど余力があれば。第2位が、パソコンアドレスドメインではないか。
携帯はそもそもずっとdocomoだった。充電が効かなくなるまで使い切る。部品があればまだ使い続けるつもりでdocomoショップを回るも、時代錯誤感に小ばかにした接客もさることながら、新機種に変更するメリットが何もなかった。他の会社から変える時だけ極端にメリットがある。フレッツの時もしかり、NTTは最悪の印象以外何も残っていない。ケチ人としては、docomoは2度とないな、となる。docomo以外の選択肢をゼロベースで探すとなり、そうなると回線YaHooであれば、抱き合わせメリットに期待をするのがケチ人だ。ソフトバンクは高いので無し。当時はまだ買収成立前ではあったが、キャリアのグループ内MVNO戦略で、イーモバイルとウイルコムが選択肢に挙がる。現在は合わせてワイモバイルとなっている。ウイルコムが買収前の最後の顧客獲得で、「3年間通話料月500回タダ」というぶっ飛んだことを現実にやっていたのだ。ケチ人としてはこれ以外の選択肢は、当然ない。これでパソコンも携帯も、回線、通信網、情報媒体はすべてグループに取り込まれていくに至る。ケチ人は、自らの最高に賢い選択の結果だと思わせられながら、完全に取り込まれていく。
YaHooアカウントがあるということは、YaHooから鬼のようにメールが浴びせられる。サービス紹介、キャンペーン、お得情報、ヤフーショッピング情報、ヤフーオークション情報・・・。1日に10通以上は届く。しかもそれらはすべて別部署、別アドレスで届いてくる。基本は迷惑メール設定にする。が、まぎれて重要な契約上のメールなども入ってくるので、件名ぐらいはチェックをせざるを得ない。そしてその件名の冒頭の文言で、見ておかないと損するのではないか?と思わせられるような、絶妙なキャッチが徹底的に考えられている。さっと目を通すだけだのつもりで、開かされてしまう。その毎日多量のメールにもかかわらず、すべてhtmlメールであり、字だけのテキストメールはほぼない。htmlメールとは、要は広告チラシのような見映えのするものだ。目引きが高く、見やすく、わかりやすい。一見複雑そうなサービスでも、ほぼ瞬解できる。内容構成、案内手順、デザイン構成、色使い、そしてキャッチコピー・・・すべてが完璧の一言に尽きる。
で、その迷惑メールから、ちょっとだけ確認しておこうと思わされ、サイトページに誘導されてしまう。そのキャンペーン、案内事項の為だけの特設のLP(ランディングページ)が設けられている。正直、引っかかってるだけやんかと思われるのもしゃくなのであまり言っていないが、制作媒体の究極完成形は、このYaHooの特設LPだ。見本を探すべきということを強調してきたが、正直、個人的に究極の見本は、あらゆる媒体、あらゆるサイトを見尽くしてきたが、その中でも群を抜いて圧倒的にダントツなのが、やはりこのYaHooのキャンペーン案内LPだ。各種案内内容ごとに設けられているが、その都度そのすべてが完璧に近い。そこまで言うかと言っても言い足りないほど、評価が高い。いわゆるUI(ユーザーインターフェース)の世界一、究極の見本は、現状知る限り、これだと断言できる。このことを楽天人は楽天ページこそ、と思うのカモしれない。しかし、楽天サイトもいくつか目を通すが、デザイン構成や、コビー文言、UI上の観点から、やはりYaHooの方が圧倒的だ。1メッセージに1LPを設けている。しかもたっぷりスペースを取り、カラフルな画面に、大きな文字で簡潔に要点を伝え、対象者心理を完全キャッチし、さらに確認したい心理にも応えるべく懇切丁寧に説明が施され、疑問や不安にも、心理を読み通されている如く、徹底的に解消してあり、「だまされないぞ人」から見ても、残念ながらデメリットが1つも見つからない。期間拘束というデメリットを明確にしてあるものも当然あるが、「今のあなたの状況ならば、とりあえずメリットしかない。(単に囲い込みの為に)新たなサービスを設けたので、手続きの手間だけがデメリットです。しておかないと、普通にただ損するだけなんですけど」という内容まで仕上げてくる。まあこれはさすがに大手以外には無理だが、目先少々の損はしても、LTV(ライフタイムバリュー)を重視してくると言うのはこういうことだと、納得させられる。
例えば1つの代表的なものが、クレジットカードの連携だろう。今やECモールとクレカ連携、ポイント連携は常識で、8,000ポイントプレゼントは当たり前になっているが、この最初がYaHooだった。CMでは楽天カードが圧倒しているが、YaHooは早期から畳みかけており、まあこの点については普通に作らされてしまった。アマゾンシンパではあるが、実際の購買において、楽天も含めて、どこの経済圏に属するか?の選択において、メインが書籍購入のため、ヤフオクが外せなかった。えっアマゾンじゃないの?と思うが、実際にアマゾン相場を、ヤフオク出品者は越えてくる。書籍以外の買い物でオークションは不安だが、書籍は、単純に読めれば、安さ比較でいい。そしてその購入は、クレカ利用でついてくるポイントによる。決済方法も、初期設定は手間が少々必要だが、一度設定してしまえばあとは毎回、ボタンを2つ3つクリックするだけだ。あざ笑うかのように「YaHooかんたん決済」という名称を付けており、くそっ、本当にかんたんだ、と思わされている。これなどは典型的にスイッチングコストが高くついている。今さら違う購買方法を設定するなんて、面倒臭いの極みにさえ感じる。その購買の循環が出来上がってしまった。便利と楽を享受し、時間コストの大幅な節約につながっている、などと思わされている。それはすべて自らの賢い選択のつもりだ。
ポイント付与のパーセンテージ合戦においても、YaHooはプレミアム会員というランクアップ会員制度を設けているが、これだと、なんだかんだ色々絡めてトータルで、カード利用、サイト内購入などの購入額、利用額の10%ほどがポイント還元されてくる。ランクアップ会員なんだから当然月会費がかかる。最初300円からはじまり、100円ずつ上がっていき、今は500円ほどだ。FP(ファイナンシャルプランナー)目線で言う、無意識で落ちていく固定コスト、方や事業側目線で言うところの不労所得戦略だ。ケチ人はそんなのには引っかからない。冷静に、還元されるポイントと、月会費を比べる。いうてもヤフオクでそこまで本ばかり買わない。メリットないな、となる。すると、「YBBアカウントをお持ちの方、プレミアム会員無料入会特典」がメールで届く。月会費不要で、ポイントは10%還元される。オークションで、その時点での日本最安価格でそもそも購入する。しかもほぼ全額ポイントで。そしてそれにさらにポイントが還元されてくる。どうせ同じものを買うなら、最もお得に購入できる、自らでカスタマイズした購入方法だ。もはやこの循環から逃れられない。常にタイムラグで、累積のポイントが未来にたまり続けている。使い切って終わりにする、ことも出来ない。あざ笑うかの如く、この循環に絡めとられ、カモられていることは、悔しい。しかしこの循環から脱出することによって被る損失感は、もはや死に等しい。人は、お得だから続けるのではない。やめてしまう損に、耐えられないのである。
1回決めてしまったがゆえに、もう変えられなくなり、もうそうじゃないと損するから、変えられなくなってしまった。
5、先の事例を、「発展する経済システムの5要素」にもあてはめてみて
囲い込みの戦略の、物理的にも心理的にも拘束されていく象徴的な事例として、YaHoo経済圏のYaHoo人に引きずり込まれていった話を見た。この話は、他の別角度の法則から見ても、見事に当てはまっているということを確認しておきたい。
事例を解析的に法則に当てはめておくことにより、脳の引き出しに、より多くの法則を体系立てて整理しておきやすい。より質の高いアイデアを発想する為にはより多くのアイデアが湧き出てきて、その中から選び抜くしかない。より多くのアイデアが湧き出てくるためには、脳内により多くの知識、情報、概念がストックされており、そしてそれを料理出来る、より多くの法則、フレーム、思考技法を道具、スキルとして持っている必要があることは、今さら言うまでもない。そういった意味では、ここで取り上げたい「発展する経済システムの5要素」とそれを「持続可能にする2つの要素」は、抽象次元の相当高めな、地球上におけるかなり根源的な部分に位置する重要な概念になる。ので、テキストの流れからすると少し膨らんで脱線的になるが、事例との親和性が高いので、このタイミングで見ておきたい。「お金2.0」というベストセラーにコンパクトにまとめられているので、ご一読を。
5-1、発展する経済システムの5要素
①、インセンティブ
「報酬が明確」・・・3M : 儲けたい、モテたい、認められたい。
⇒ 欲望を刺激し、それが叶うことを見せつけ、叶うという実感を持たせる。
②、リアルタイム
「時間経過によって変化する」・・・常に変化することを参加者が知っている。
⇒ 気が抜けない、放置できない、常の関与を余儀なくされていく。
③、不確実性
「運と実力の両方の要素が関わる」・・・実力に対する正当な努力と、運に対する不確実な期待と妄想の両方に取り組める。
⇒ 実力、努力では難しくとも、それ以外の可能性を感じ、離脱していかない。
④、ヒエラルキー
「秩序の可視化」・・・今の自分および他人の、相対的な位置づけが数値、ランキングによりだれからも明白になる。
⇒ そのままではよくないという、向上意欲を煽り、他との違いを認識させ、叶わずとも不当な不満を抱かせない。
⑤、コミュニケーション
「参加者同士の交流の場がある」・・・参加者同士のサポートや議論が可能。
⇒ その全体が同志だという一体感、連帯感が自然発生していく。参加者個々が運営者化していく。善意の参加者たり得る以外の選択肢をなくさせる。
5-2、その経済システムを持続可能にする2要素
①、寿命
「その経済システム自体にあらかじめ、寿命を設定しておく」・・・ 経済システムに変化を持たせておくとは言え、構成する参加者間のヒエラルキーは固定化はしていき、利益、便益は一部の参加者に偏っていくことは避けられない必然。それをリセットしていく。それと飽きること、意欲や刺激の麻痺への対策。
⇒ 次の選択肢を用意し続ける。次の新たな選択肢へ移行していくが、しかしそれ自体が大きな枠組み内でのこと。経済システム内で回遊させていく。あらかじめ変化していくことを周知する。既得権の損失や変化自体への心理抵抗を乗り越えさせるべく、そういうものだという認識に慣れさせる。ここを乗り越えられない経済システムが衰退し、終わりを迎える。
②、共同幻想
「参加者全員が思想や価値観を共有している」・・・すべてを満たしていてもいつか終わることは避けられない。寿命をどこまで伸ばせるかは、構成する参加者がその意図や理想、理念、価値観を共有しているかどうかによる。それらのアナウンス。周知を浸透させていく。
⇒ 経済システム内での利害が対立しようとも、その枠組み自体、経済システムそのものの維持は、全員にとって第一義となるようにする。宗教というシステムは、国家というシステムより寿命は長い。どんな普遍的に思える思想、価値観と言えども、宇宙の営みレベルで見れば「幻想」に過ぎない。改革、イノベーション、革命とは、幻想の上書き。
今まさに、資本主義経済というシステムは寿命を迎えようとしている。価値主義経済という新たな選択肢へ。それでも経済というシステム自体はかろうじて存続出来るか? ( 参照 : 「お金2.0」 )
5-3、YaHoo経済圏で見てみれば
①、インセンティブ・・・損したくない、得する刺激が満載。このサービス経済圏の中にいることで様々なメリットが得られる。事例には出てきてないが、YaHooショッピングやYaHooオークションの出店者、出品者は当然儲けたい。今に至ってはむしろ、この中にいなければ物販、ECは成り立たない。
②、リアルタイム・・・あらゆるサービスキャンペーンが次から次へと繰り出される。期限が設けられており、常にチェックさせられ、また後でゆっくり見て考えるわ、という時間猶予を与えない。時々刻々変化するマーケット全体の変化は、むしろこの中にいないと体感出来ない。
③、不確実性・・・ショッピングの出店者たちは、実店舗を持たずとも、かつ、地方、国境など、ロケーションの壁も取り払われ、だれにでも平等にチャンスが拡がった。リアルの経済ルールとは違う、サイバー空間の土俵での新たな経済ルールの上では、大企業も個人店もほぼ関係ない。1位や大賞はほぼ知らない会社が獲っている。
④、ヒエラルキー・・・プレミアム会員に対する相当なインセンティブ供与。ショッピング購買者にもランキングを設定している。出店者側も同様。購買、落札側にも、出店、出品側にも相互に評価を付けさせ、その信用を数値化し、公開させている。結果、善意の参加者しか参加出来なくなっている。
⑤、コミュニケーション・・・今や当たり前のカスタマーレビュー。購買、落札側と、出店、出品側の直接相互取引形態。関与は違反者に対する取り締まり。フィーはショバ代、手数料、広告料と入場料のビジネスモデル。あくまでも場の提供、プラットフォーム戦略。
①、寿命・・・今現在、このYaHoo経済圏は発展成長の最中にあり、売上の更新を続けている。なにがしかの寿命設定を想定しているのかは、さすがに参加者レベルからは見えないし、今認識させるタイミングではないだろう。今後どこへ向かおうとしているのか、孫さんの頭の中は相当にぶっ飛んでいそうなことは、ソフトバンクのCMで示唆的な気はする、という程度から想像する程度だ。いずれにしても、次元の違う新たなサービスを画策中なのであろうという期待感は、グーグルやアマゾンと同レベルで感じる唯一の日本企業だろう。
②、幻想・・・購買者も出店者も、ソフトバンクグループの理念や価値観を共有しながら参加しているなんてことはないだろう。楽天やアマゾンと明確に区別しているわけでもない。むしろ、すべてに併存出店しないと意味がないぐらいにはなっている。しかし、ワイモバイルの利用やybbADSLを利用しているのは、NTTに対するアンチテーゼのような意味がなくもない。孫さんの、NTTや国家に対する岩盤規制へのチャレンジしていた姿は思い浮かぶ。あるいは、日本の経営者で、海外の有力企業を札束攻勢でM&Aを掛けまくるはったりや、AIだの、新エネルギーだの、宇宙ビジネスだのに、桁違い、破格の投資をかけていく様、アラブから桁違いの金を引き出す様は、日本の英雄に映らなくもない。詐欺師もここまで行けば歴史に名を遺す。野茂がメジャーを席巻した、あのパイオニア感を感じている人は多い。衰退していく日本の中ではわくわく感は第一位の人物であることに違いはない。個人的には前述したように、サービスキャンペーンのLPページコンテンツが秀逸すぎて、底知れない厚みの凄みさえ感じてしまっている。
以上、「発展する経済システムの5要素」に当てはめてみた。少々強引な後付け感は否めないが、なにせこんな風にいちいち、法則なり、原則なり、パターンなりに当てはめて思考整理することが重要だ。それを繰り返しながらだんだんと、ゼロベースからオリジナルの発想へと結びついていく。この「発展する経済システムの5要素」は抽象度が高く、かつ心理を含めた真理を射抜いており、かなり確度の高い法則に思う。ということは、概ねどんなことにも当てはめやすいし、かつジャンルを問わず、規模やスケールの大小を超越して当てはまる。ご自身の事業のサービスにもイメージがつけやすいのでは。
6、「逃がさない」囲い込み・まとめ ~ 組み合わせて施策化
囲い込みの戦略に戻る。それぞれの切り口論点ごとに見てみたが、実際の施策化は難しい。切り口論点ごとに見てしまうと、どうしても切り口論点ごとに思考してしまう。1論点に1アイデア、1施策、というような思考だ。しかし実際的には、施策に区切りもなく、切り口論点は複合的に絡んでいる。心理的拘束も、物理的拘束も。さらにその抽象次元の高いところで、承諾のトリガーは複合的に効いている。世の中の成功事例でも、切り口論点から企画し、施策化出来るなんて言うのは、よほどの大企業の企画マンか、よほどのコンサルタントしか難しいだろう。理屈の説明の多くは、後付けがほとんどだ。あれやこれやと次から次へと色々やってみて、上手くいったものは、切り口論点に当てはめてみれば、うまく説明がつく、というのがほんとの話。今やっていて、割とうまく機能していることって、何が当てはまっているのだろう?、ここからまずは考えてみる。機能している切り口論点と、含まれていない切り口論点があるはずだ。その施策にプラスアルファで、含まれていない切り口論点を付加させるべく、それは何が具体的に当てはまるのか、考えてみる。多少思考は絞れるはずだ。
単純に、切り口論点をくっつけて、1本の文章に文字化して見る。
「先生」の立場で「その人仕様に仕上げ」、一定の枠を設定しその中で自分でも取り組ませ、その枠の中でオリジナリティを意識させ、それが「自己カスタマイズ」となり、枠内からの脱出、枠外へのチャレンジには「スイッチングコスト」がかかり、そこから先への展開、それ以上への発展には「指導、アドバイス、示唆」が必要となり、その指導、アドバイス、示唆を「失う損失が最大のリスク」だと感じさせるに至る。
どんな業種、商品・サービス内容であれ、なんとなく当てはめてみやすいイメージは沸きやすい気はする。具体的に何かあてはめたり、文字化してみたりするのは割愛する。個別時間などであれやこれやと検討してみたい。今何かのイメージがわかなくとも、この骨子的な文章を常に意識しながら営業活動、接客活動していく中で、お客様の為に無意識にやってみてあげたこと、お客様の為に無意識に言ってみたこと、口や応対についつい無意識で出てきたことと、「あっ!」と結びついたり、「キタ、キターッ!!」とつながったり、無意識、偶然を1つずつ順々と体系化していくことが出来ればいいのではないか。それこそが、世界で唯一無二のオリジナルオペレーションであり、極めて自然な形での逃がさない、囲い込み戦略であり、鉄板の「うちでなければならない理由」になるはずだ。1回はぐっと深く考えてみる。あとはうっすらでもいいので、ぼんやりと常に意識し続けていく。何か確立できるといいですね。