戦略思考の心・技・体(14) 技「仮説検証・分解技法」(5)~構造整理
構造整理
近隣同業の繁盛店を見て思う。何が違うのか?秘訣、違いを知りたい、と。ビジネスにおいて成功するか失敗するかは、実に多くの要素が複雑に絡んでいる。あまりに多様で複合的で無数の視点、可能性、組み合わせが存在し、的確な分析はとても及ばない。行って見たり、調べたりするけれども、結局は自分の目線で関心のある部分、自分の哲学でポイントだと思う部分、表面的に見えている部分だけを見てしまい、偏った判断をしてしまう。運がよければその判断は参考材料になるかもしれない。でもあまり当てにならないことのほうが多い。で、結局何が違うのかはわからないし、自身のビジネスに反映させることは出来ない。
個人店主なら、競合関係にある他店や他社なら別に気にすることも無い、自分は自分と割り切ってそれ以上追求しようとはしないかもしれない。しかし従業員が多数いる、多数の出資者がいる、借入が残っているなど、ステークホルダー(利害関係者)が多数関わるようなケースであれば、そんなわがまま経営は許されない。競合に後れを取っても許されるという選択肢は無い。出資者への期待配当を割るわけにはいかない。返済を払わないわけにはいかない。「いやいやよそを研究しなくてもうちのオリジナルで勝負する」と、多くの経営者たるもの、そう思う。 では「オリジナル」とは何か?技術や商品、サービスのことを指しているのか、はたまたビジネスモデルなどの経営形態のことを指しているのか。商品レベルとビジネスモデルレベルでは次元の階層が違う。論点はまったく別のことになる。単語の意味一つとっても、人によって解釈は変わる。 過去の歴史上、未だ現れていない「オリジナル」は存在するのだろうか?通常それはビジネスの世界では「イノベーション」と表現されることが多い。その表現になると「そんな大それた意味ではない」と思う。ではその人の言う「オリジナル」とはなんだろう?本人にさえわからない。突き詰めれば相当混乱している話にも関わらず、この程度のやり取りや会話は普通にやり過ごされる。意味不明瞭なロジックがこうして無意識に脳内に蓄積されていく。
通常、アイデアはすべて過去から学ぶ。その過去の事例はすべて他店、他社の事例だ。結局私たちはすべて「他」から学ぶ以外に無い。先に確立した賢い先達を研究することによってのみ何がしかのイメージ湧き、それが自分なりのアイデアへとつながるのである。今目の前にある近隣同業者からその違い、ポイントを分析し汲み取れなければ、目の前に実体の無い過去の事例から汲み取ることはさらに難しい。別にことさら近隣同業に学ぶということを強調しているわけではない。どうしても「他のうまくいっているやつはくそくらえ」と、妬みなどが入ってしまう。私たちは感情や思い込みのバイアスを受け、ただでさえ混乱する思考がさらに複雑にこんがらがっていく、ということ。私たちの脳内には多様なあいまいと不明瞭が複合的に絡み合い、感情や思い込み、先入観などがさらに混乱を増幅し、何かの答えを出すどころか、まともにものを視ることさえさせてくれない。そうなっていること自体にまず気づけないと、ロジカルシンキングの必要性を認識できないし、ここから先の構造化「構造を整理する」という概念は意味不明な作業としか写らない。一定レベル以上の人たちが望むことはただ一つ、脳内にあるあいまい、不明瞭、思い込み、感情などの脳の客観分析機能の阻害要因をすべて取り除き、一点の曇りも無い鏡状態で、まずはすべての事象を視たい、のである。それに極めて近づく作業が構造化、構造整理、事象と論理の図解化ということ。
構造整理の意図
構造化するということの意図は、1「大局を視る、全体像をとらえる」ということと、2「関係を整理する、つじつま整合性を確認する」ということ。
1、「大局を視る、全体像をとらえる」とは、重要なポイントを見落とすことなく全体を見て、さらに各ポイントの重要性を比較検討すること。つまり全体の中の核心を探り当てることをしたい。表面的には大事だなと思えることがいくつか挙がっているが、しかしそこを触っても一時的な応急処置にしかならず、しばらくするとまたそうなるであろうと思われような時、もっと核心部分を根本的に改革するほうが重要度は高い。それはわかっていてもその核心部分、事の急所はどこだということはなかなかブラインドされていることが多い。それを見つける作業。そうして初めて、対処項目に順番、優先重要度のランキングがつけられる。
2、「関係を整理する、つじつま整合性を確認する」とは、1で洗い出された論点が本当にそうなっているのか、その関係性、因果関係の流れを確認すること。対処項目同士の次元階層は適切か、因果関係のつじつまは合っているか、などを図解し、ビジュアル化して確認したい。そしてそのことを共有理解する為に、論理の流れを次系列化し、図解表現して、全員が一義理解にたどり着きたいということ。組織が動く図面。建物を作る際の図面、行程表の課題解決、事柄解決、目標達成などの事象や論理を成し遂げる版である。