戦略思考の心・技・体(21) 体「根源的学習習慣・結局は読み書き」(6)~メモ書き技術(3)
表現力の成果
「表現との出会い」を重ねていけば、当然無意識で日常の言葉遣いも変わっていく。わかりやすさ、説得力も全然別人のようになっていける。言葉の力は人の脳と心をとらえる。あらゆる会議で自然とオピニオンリーダーになっていったり、従業員のマインド、姿勢が露骨に変わってゆく。常に脳が理路整然としてすっきりしていて、メンタル面でもイライラも自然と無くなり、安定する。物事の理解も今までよりも深くなり、相手の言わんとする数歩先、深層心理もわかるようになり、そうなれば当然、判断もアドバイスも適切になる。いずれメモ書きのスピードが上がってくれば、書き出していくテーマが多岐にわたり、枚数も大量になる。頭の中に実に多岐にわたるテーマの、大量な知識と表現力が身につくということ。メモを構成立てて整理するところまで持っていき、ツリー型に図解し、1枚の絵として脳にインプットされていれば、そのツリーの中に包含される単語、キーワード、フレーズのいずれかを見るだけで、聞くだけで、そのツリー図がぱっと頭の中に展開され、その内容全体を瞬時に理解し、判断できる。優秀な経営者の方の判断が速いというのは、こういう図が何枚も大量にインプットされているということ。単純にカンが優れている、というような話だけではない。一定次元以上の世界ではスピード勝負になるだけに、最終的にはスピード感も意識していきたいところだ。最初から欲張っても、「今の私」には難しいのかも。書き続ける習慣さえつけば自然にそうなる。
このメモ書きは前提としてビジネススキルとしてとらえられているが、非常に大きな効果を発揮するのはメンタル面での安定度だ。メンタル面の弱い人は人格も変わっていく。メンタル面が「弱い」という意味は、気が小さいとか、チキンとかそういう意味だけではない。イライラしやすい、すぐに火が付く、孤立が怖い、固執が強いなど、感情抑制が効きにくかったり、柔軟性や自信が少なかったり、あるいは飲酒、喫煙、発散に過度に頼り、ストレス耐性に欠けるなどもすべて、メンタル力の「弱さ」だ。自己の心や脳の一番深いところから吐き出し、客観把握していくことを続けると、今までとは違う土台からの、安心と安定と、そして根拠の伴う自信が湧き出てくる。この「自信」とは、対外的な意味ではなく、内面的に自らを信じる力のことを意味する。言論、論説で言い負かされる気はしなくなるからだ。相手の論理矛盾は簡単に指摘、論破できるようになるからだ。見渡して、自分より大所高所から深く論理的に物事を考えている人は存在しないからだ。それを踏まえたうえでの大ばくちを打てる腹も決まっているからだ。外した時に最低限、たった一つだけ守らなければならないものが決まっているからだ。その他の処理に対する方策も手は打てているからだ。究極ドン付き、守るものも、失うものに対しても整理がついており、「恐怖」という概念自体が自身の中から消滅してしまっているからだ。批判も攻撃も、心配してくれているという暖かい声援にしか聞こえない。生命体として「最強」が極まる、とはこういうこと。言葉や態度に無意識の力強さが出てくる。優秀な経営者の人に感じるオーラだ。同種の人物を引き寄せる力も強くなる。合わない人は近づきにくい。成功の波動が漂う。がむしゃらなメモ書きが自身を導く。「吐き出せ!!」
メモ蓄積の成果物化 ~ロジツリ、企画書、長期工程表etc.
メモ書きしたものをホルダーに整理し、後々の活用に生かしたいことは先に触れた。ビジネスの企画、解決課題につなげたい。最初の段階から書き出しのテーマを、解決課題の「あるべき姿」や「現状」と設定しても、ハードルが高く、範囲が広すぎる。同様に「うちの客は誰なのか」や「うちは何屋なのか」と設定しても、一見シンプルなテーマに思えるが、これも極めて複合的、多面的で書き出しの論点が広すぎる。たとえば、まずは「うちの客は誰なのか」を深ぼっていくのに、書き出しテーマの観点を分解する必要がある。まず観点分解の書き出しだ。このケースの事例としては、絶対的な観点ではないとはいえ、まさしく「セグメンテーション」のテキストで散々見てきた、「10の切り口」が当てはまる。切り口一つ一つを1枚の紙にテーミング(テーマを割り当てる)し、それでもまだ書き出しとしては広いだろう。その切り口ごとにさらに観点分解してテーマを書き出す。さらにその分解したものを1枚ずつテーミングし、それでも広ければさらに分解する・・・と。テーマ自体の書き出しだけで永遠に終わらないような気がするが、このテーマ分解のプロセスが、次元の分解をしているわけだから、この作業がまさしく次元階層化だ。階層化、テーマ分解作業が行き着いたら、その行き着いた一番末端のテーマからメモ書き出しスタートだ。その末端階層の書き出しが済んだら、階層を1つ上にあげてさらにメモ書き出しを進めていく。順次、同様に階層を上へ登っていく、逆流していくように大きなテーマに向かって書き出していく。上位階層の大きな抽象的なテーマを書き出していくと、その書き出した内容についてさらに、分解書き出しが必要になってくるものもある。であれば、そのことを1枚にテーミングして、書き出していく。こうやって観点の漏れをカバー(MECE)していく。こうやって次元階層化されたメモ書きが蓄積していく。そのメモ書きを広い床の上で、ツリー状にパズルのように並べていく。これがロジックツリーの作り方だ。あまりMECEにこだわりすぎず、すべての分解テーマを書き切ってからパズルをするというよりは、ある程度の階層のメモ書きがそろったら、先にパズルをして、全体像をツリーの図解、絵として把握したほうが効率もよく、全体チェックにもなる。俯瞰した状態で明らかに不要な論点、分解テーマは書き出す必要はないかもしれないし、本当に重要な核の部分がどこなのかをいち早くキャッチしたい。
意識したいことは、表面的に今問題になっているテーマ、今必要で掘り下げたいテーマの、直結する範囲で一番上位階層、大きなテーマから分解をスタートしたい。最終ゴール、というより、とりあえず何の答えを出したいのかの。あまり大きく抽象的になりすぎて、その表面の問題、課題と離れすぎてもぼけてしまい論点がずれかねない。このあたりの落としどころは難しい。慣れないうちは無理をせず、目の前のテーマから始める。慣れてくれば、自ずと根本のそもそも論のずれ、違和感に敏感になっていけるので、そうすれば「真の問題発見」を意識すればよい。最初からそのことを意識すると、「真の原因追及」「そもそもどうしたいのか」になってしまい、ここから抜け出られない。このこと自体が究極とてつもなく論点が広い。「今の私」にはそのことすら、そう簡単にはさせてもらえない。順番に。「分解のやりかけ」の残骸が蓄積すると、脳が「ああやっぱりこれもダメ」となりかねない。なにせ重要な論点は「脳が分解したい」と、解剖欲求を感じてくれれば幸いだ。そう思える論点、テーマから取り掛かることが大事。不必要に構えない、本丸へ焦らない。じわじわと攻めあがろう。どのみち脳を味方につけられなければ勝ち戦にはつながらない。新商品・メニュー企画とか、業務オペレーションのマニュアル化とか、教育カリキュラム、ホームページ企画書、チラシ企画構成、福利厚生イベント、あのミスをあの子にどう言う、どうせほめるなら感動的にほめたいどう言う・・・・などなど。もちろん業務面に限らない、プライベート、自己啓発・自己研鑽、政治経済トピックス、業界研究、前から趣味として興味のあったテーマ・・・まあ、大事なのは内容ではなく、「面白がりながら書き出し続ける習慣化」。