WEB戦略構築(3) 「自動集客マシーン化」 03 ~コモディティ内差別化02
依頼したモデルが追加の報告をした。「この先端の微妙なカール具合を説明しようとしている時、その店のスタイリストはすごくめんどくさそうだったわ。露骨にめんどくさそうな感じではなかったけど、聞いてるような聞いてないような。ほとんど反応しなかったのよ。すごく簡単にかしこまりましたって、すぐ作業にかかったわよ。本当に理解できたようには思えなかった。でも出来上がりはほぼ近かったけどね。」 この追加報告をどう解釈したらいいのだろうか。無反応で出来たってことは、技術が高いってことか、カンが鋭いってことか。しかしモデルの口ぶりからすると、「わかったのかわかってないのかわからないような反応」に対して、「めんどくさそうだった」と感じている。これは明らかに不快感を感じたということだろう。モデルは「私は行きたいとは思わない」と言っていた。技術的な結果は遜色なくとも、反応一つでそんなに引っ掛かるのか。
自分が○子さんを初めてやった時のことを思い出した。うん、確かにかなりめんどくさかった。その微妙なカール具合を一生懸命説明してきていた。正直何回聞いても理解には至らなかったが、こんな感じですか、これぐらいの緩さですか、と何度も巻いたり、作ったりして確認してあげたことを思い出す。最終的に「そうそう、この感じ」と言われたが、正直わかっていなかった。○子さんには結果、カンで仕上げたわけだ。しかし「あーすごーい。どこへ行ってもわかってもらえなかったのに、はじめて出来た、この感じ。」といたく感動してくれた。それ以来10年になる。これって、結局一体何だ。
ということで、ここで○子さんの潜在心理、○子さん自身もわかっていない心情を掘り下げてみる。カールの微妙なゆるさ具合の説明をするたびに、どこの美容室でもめんどくさがられたか、そこまでではなくとも大体でいなされたか、誰一人として○子さん自身が、「わかってくれてる」という実感が出来る人がいなかった、という背景が汲み取れる。出来上がりの問題ではなかったわけだ。自分がわかってほしいと思って一生懸命説明しているその時に、どこまで真摯にとらえ、汲み取ってあげようとしてくれていたか、その姿勢の部分に、その伝わってくる心情の部分に、意識の奥底でYES、NOを出していたわけだ。微妙で難しい注文を出してくる人であればあるほど、その傾向は強いだろう。自社の強み、売りは、「他のスタイリストが面倒くさがるような注文に対しても、真摯に向き合って何とかしてあげようという姿勢が、相手に伝わるようなカウンセリングスタイル。」とかなる。
では技術の押しは不要なのか。まさかそんなことはない。どこまでいってもヘアサロンなら、技術の打出し、スタイルの打出し、商材の打出し、この点についてはこの点で、さらにロジカルに言葉を極める必要はある。こちらはあくまでも「表の売り」。 他とは決定的に差別化したい点は、もう一つ、「裏の売り」、「奥の売り」である。うちの切り札、ポイントゲッターはこちらの方だ。表面の形、スタイル、見た目を整えるだけではない。その満足度とともに、理屈抜きに感じ取ってしまう潜在意識の奥底の部分でも、その方自身の認識を越えたところで満足していただく、「YESを獲る」、ということ。その方自身も気付けない、「潜在意識の奥の満足度」だ。「今まで他店で理解してもらえなかったり、納得の仕上がりに至らなかった、微妙で繊細なご要望。私にチャレンジさせてください!!」、こんなキャッチになるだろうか。私が、「叶えます!!」、「お任せください!!」・・・などは、力強く、自信に満ちていいように思うが、しかし潜在意識では「傲慢」に聞こえてしまうのだ。期待値を不用意に上げてしまう。あなたとともに一緒に力を合わせて、解決するチャンスをください、ぐらいの相手に対する尊重、「敬意」が意識のポイントだ。対峙するのは相手の表面のキャラではない。奥底の、半ば人類共通の本音の部分だ。
「そんなことはずっとやってきている!!」という声が聞こえそうだ。もちろんそうだろう。客商売であれば当然のことかもしれない。ここももう少しきめ細かく、論理的に見てみよう。この流れで大事な論点は二つ。一つ目のポイントは、自分がやれているかどうかではない、ということ。客がどう感じているのか、という点。さらに言えば、表面的に感じてもらっている、ではだめで、潜在意識の奥、無意識の部分がYESなのか?という点。ともう一つは、そのことが伝わるべき人に伝わっているか、という点。今の定着客さんたちはそれを感じているからこそ通ってくれているのだろうが、今の論点はこの人たちではない。今全体の話は「新規集客の自前の仕組み創り」だ。未だ自社を知らない「未知なる潜在客」、に伝わらなければ意味はないのである。実際、ここに伝わるのは正直かなりの関門だ。どうアクセスするのか、ではなく「どう見つけてもらうのか」が、このテキスト全体のテーマでもあるが、その点については今後じっくり大量に後述する。その手前の話として、まずは自社として、「うちはそういう接客スタイルの店ですよ、うちはそういう姿勢で臨んでいます」ということ自体のメッセージは発信出来ているのだろうか。どこかに言語化、文字化、文章化は出来ているだろうか。まずはそれが一番大切なポイントとして、メッセージ作りから取り組みたい、ということである。
「コモディティ内差別化」とは、差別化する競争の土俵を商品、サービスなどの物理的な土俵から、潜在的な心情の土俵へとシフトする、ということ。「型枠」自体を、ルールそのものを変えてしまえ、自分で基準を構築してしまえ、ということである。しかしこの土俵には、パッケージングされたような安易なハウツーは存在しない。ハードな思考トレーニングは避けられない。この土俵で独自のハウツーを確立できれば大きい。今はまだ、特にうちの業界は、ほぼ白地だ。これが「マーケティングの勉強」である。 (コモディティ内差別化 一区切り)