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事業承継スキーム(1) 非上場株式の評価方式・計算方法(1) ~純資産価額方式、類似業種比準価額方式

 事業承継の各種スキームを順次見ていきたいと思いますが、まずはすべての根幹にあることは「株価の引き下げ」であり、そのために何をするのか、が問われていくことになります。そういった意味ではまず、そもそも非上場の自社株の株価計算のしくみはどうなっているのか、ここが何よりも基本になります。この計算方法がかなり複雑でまずはこのこと、「非上場株式の株価の計算方法、評価方式について見ていきたいと思います。

 非上場株式の評価は、「株式の持株割合」と「発行会社の規模」、その他「資産構成」、「営業状況」等によって評価方法、計算の方式が決まります。

非上場株式,相続税,評価

 この一覧図表を基に、それぞれ会社および株主の状況によって、株価の評価方法、計算方式を当てはめます。いくつもの方式が複雑に書いてありますが、前提はあくまでも事業承継の場面ですので、通常考えられうる一般的な、オーナー社長の親父様から息子への株の引継ぎ、引渡しということで考えますと、「会社区分」としては「一般」の大・中(大・中・小)・小とあと、「株式保有特定会社」、「土地保有特定会社」ぐらいが該当するかと思いますので、主には「純資産価額」方式、「類似業種比準価額」方式の2つがメインとなり、それぞれの、単独もしくは組み合わせの比率によって計算をすることになります。ですので、この2つの計算方式を今回は見ていきたいと思います。

 

純資産価額方式による評価

純資産価額方式は、課税時期における各資産及び負債を時価(相続税評価額)によって評価し、算出された純資産価額を発行済株式数で除して1株当たりの株式の評価額を計算する方法です。

 具体的には、次の算式のとおり、資産の相続税評価額から、負債の相続税評価額および資産の含み益に対する法人税額等相当額を差し引いて、評価会社の株式価額を求めます。

「 1株あたりの純資産価額=( 相続税評価額により計算した資産総額-相続税評価額により計算した負債総額-評価差額に対する法人税額等相当額 課税時期における発行済み株式数 

(注)評価差額に対する法人税額等相当額とは、課税時期に発行会社が清算した場合に課せられる法人税等に相当する金額です。具体的には、相続税評価額による純資産価額(総資産価額-負債金額)と帳簿価額による純資産価額の差額に42%を乗じて計算した金額をいいます。

(注)発行済株式数は、直前期末ではなく課税時期現在のものであり、また、150円換算ではなく実際の株式数です。

各勘定科目における注意点は以下の通りです。

・ 帳簿価額は、会計上の簿価ではなく税務上の簿価を使います。したがって、別表五(一)の加算・減算項目に注意します。

・オフバランスになっている生命保険金、借地権や営業権等については、帳簿価額がゼロであっても、相続税評価額が算出される場合にはそれを資産として認識します。

・繰延資産、前払費用や繰延税金資産等については、財産性がないため帳簿価額をゼロとします。

・引当金(貸倒引当金、賞与引当金等)は、確定した債務ではないので負債としての帳簿価額はゼロとします。

・オフバランスになっている未納租税公課(固定資産税)、確定した死亡退職金については負債として認識します。

・課税時期開始前3年以内に取得または新築した土地等

・家屋等の価額は、課税時期における通常の取引価額相当額(帳簿価額が通常の取引価額に該当する場合は帳簿価額)で評価します。

・評価会社が他社の非上場株式を所有している場合、当該非上場株式の評価における純資産価額算定上、評価差額に対する法人税等は控除しません。

 

類似業種比準価額方式による評価

類似業種比準価額方式は、評価会社の一定の経営指標と同業種の複数の上場会社の一定の経営指標を比較し、その割合を上場会社の株価に乗じて計算する方式です。

平成2911日から計算式が改正されています。

それまでの計算式は、

「 類似業種比準価額=A × ( Ⓑ÷B+Ⓒ×3÷C+Ⓓ÷D ) ÷5× ( 大会社0.7 or 中会社0.6 or 小会社0.5 )a 

a × 1株あたりの資本金等の額 ÷ 50

でしたが、改正後の計算式は、 

「 類似業種比準価額=A × ( Ⓑ÷B+Ⓒ÷C+Ⓓ÷D ) ÷3× ( 大会社0.7 or 中会社0.6 or 小会社0.5 )a 

a × 1株あたりの資本金等の額 ÷ 50

(注)それぞれの割合は小数点2位未満を切り捨てます。
(注2)それぞれ小数点2位未満を切り捨てた後の数値を合算して3で除した割合を計算します(小数点2位未満切り捨て)。

となります。

上記算式中の「A」、「Ⓑ」、「Ⓒ」、「Ⓓ」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次によります。

A」=類似業種の株価

業種目の選定は、国税庁から公表される「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」通達の中から判定します。また、Aの金額は、課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価及び前年平均株価の4つのうち最も低いものとするのが今まででしたが、この点も平成2911日より改正されています。上記4つに加え、前2年の平均というのが追加されています。

 「Ⓑ」=評価会社の1株当たりの配当金額

評価会社の1株当たりの配当金額は、直前期末以前2年間の平均配当額(特別配当、記念配当等の非経常的配当金は除きます。)を直前期末の発行済株式数で除して計算します。なお、ここでの発行済株式数とは、類似業種との比較可能性を確保するため、資本金等の額を50円で除した株式数を用います。したがって、登記されている実際の発行済株式総数とは異なります。

 「Ⓒ」=評価会社の1株当たりの利益金額

評価会社の1株当たりの年利益金額は、直前期末の利益金額、直前期末以前2年間の利益金額の合計額の2分の1のいずれか小さいほうを直前期末の発行済株式数で除して計算します。
ここでの利益金額は、以下の算式で計算します。

年利益金額 = 法人税の課税所得金額-特別利益などの非経常的利益金額+受取配当等の益金不算入額-受取配当等に係る所得税額控除額+繰越欠損金の損金算入額

ただし、1株当たりの利益金額がマイナスになった場合の利益金額は「ゼロ」とします。

「Ⓓ」=評価会社の1株当たりの純資産価額(帳簿価額)

直前期末の資本金額、資本積立金額及び利益積立金額(別表五(一)の差引翌期首現在利益積立金額の31「差引合計額」)の合計額を直前期末の発行済株式数で除して計算します。利益積立金額がマイナスにより1株当たりの純資産価額がマイナスになったときは「ゼロ」とします。

B」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの配当金額

C」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの年利益金額

D」=課税時期の属する年の類似業種の1株当たりの純資産価額(帳簿価額)

類似業種比準価額方式では、評価会社の実績(1株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額)を上場会社と比較して評価額を調整します。この中でも、改正前は「利益金額の調整割合が5分の3と大きくなっており、利益が大きいと株価が高くなりましたが、この点が改正され、1:3:1の割合比が改正後は、1:1:1と同割合比になりました。類似業種比準価額を下げるには各要素を下げればよいのですから、配当金額や利益金額純資産価額のいずれかの要素数値を下げることをもって、株価引き下げ対策となります。


 
会社の利益を引き下げるには、従業員賞与を支給する、古い固定資産を除却する、寄付金を支払うといった方法を使います。考え方は法人税の節税手法と同じです。また、役員に昇格した人や子会社に転籍した従業員に退職金を支給すれば、年利益金額を圧縮することができます。さらに、土地や有価証券の含み損を思いきって実現させることも効果的です。含み損を実現させると利益が下がるだけでなく、純資産価額も引き下げることができます。

利益の圧縮には一時的なものと継続的なものがありますので、一時的なものであれば株価は下がった後、速やかに後継者に株を移転しなければなりません。

配当金額や利益金額純資産価額の中でも特に、以前の1:3:1なら割合比の大きい「利益金額」を引き下げることが、対策のメインテーマでした。が、その点の考え方が変わってきます。株価を引き下げるために、その期の利益調整をすればいい、ということでもなくなりました。

 
組織再編の手法を使うのであれば、後継者を株主とする新会社を設立して、高収益部門を事業譲渡すれば、利益金額を減少させることができます。また、純資産価額がマイナス(債務超過)の会社を合併すれば、純資産価額は下がることになります。

このあたりの、評価額を引き下げる方法論として、代表的なスキームがいくつかありますので、それを順次見ていきたいと思います。

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