事業承継スキーム(16) 賃貸不動産(3) ~貸家建付地、不動産評価公式一覧
貸家建付地、不動産評価公式一覧
先回からテーマが不動産について取り上げています。資産価値の評価方法について、まずは基本となる「自用地」「貸宅地」「貸家建付地」の「土地」の計算式から。「自用地」と「貸宅地」を見ました。今回は「貸家建付地」から。
「貸家建付地=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」 となります。
貸家建付地とは自分の土地にアパートやマンションを建てて貸している状態です。土地自体は誰かに貸しているわけではなく、建物を賃貸していることです。賃貸オーナー業です。色々と問題になっている、駅から離れた地方地主さんへのアパート賃貸業の提案で、アパート建設するケースなどがこれに当たります。
投資マンションの賃貸オーナー業なども、その一つの部屋の面積分の区分所有の土地が貸家建付地としての評価となります。
「借家権割合」とは、実際に建物や部屋は他人が住んでいるので、その住んでいる人の借りている権利分を割り引くという発想です。これは現在は一律30%と決まっています。
「賃貸割合」とは、貸している建物のうち、貸している割合です。投資マンション1室オーナーならその部屋がすべてですから100%、計算式として定数1となり、評価上影響はありません。何十室もある1棟オーナーさんだと、全室賃貸していれば100%ですが、最上階に自分が住んだり、空室があると100%ではありません。常は満室埋まっていたのに相続発生時だけたまたまごっそり空室ができていても、継続的に賃貸していたと認められれば100%の解釈です。駐車場を併設した場合、部屋の居住者に部屋の賃貸と一体で賃貸する場合は貸家建付地の解釈ですが、部屋の住人以外に貸したり、コイン式にするとその駐車場部分は自用地の解釈になります。賃貸割合に関しては要件によって解釈が多岐で複雑なので要注意が必要です。
このコラム上での以後の設定では、単純に100%、定数1として計算式上、省略します。借地権割合も仮に一律60%、0.6とします。借家権は上述通り30%、0.3です。0.6×0.3で0.18となり1から引いて0.82、要はやはり80%程の評価額になるということです。
借地権割合70%の場合でも0.7×0.3で0.21となり1から引いて0.79、やはり80%です。まあだいたいこの辺に収斂されるような設定です。
土地の評価の公式の主だったものはこれぐらいにして、建物の評価式を見たいと思います。建物は主に2つ、「自用家屋」と「貸家」です。建物の公式はいたってシンプルです。「自用家屋」は固定資産税評価額×1、単純に固定資産税評価額です。「貸家」は「自用家屋評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」です。借家権割合は30%でしたので、自用家屋評価額つまり固定資産税評価額の70%、7掛けということです。
ここまで出てきた公式を一度まとめますと、
・「自用地評価額=路線価×面積×各種補正率」
・「貸宅地=自用地評価額×(1-借地権割合)」
・「貸家建付地=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」
・「自用家屋=固定資産税評価額×1」
・「貸家=自用家屋評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」
これ以外に、土地のケースで
・借地権を設定せずに地代を受け取って賃貸の場合 「自用地評価額×80%」
・借地権も地代もなしで無償返還届を提出する場合 「自用地評価額×80%」 を見ました。
これ以外で相続税評価計算上、主要なものとして「小規模宅地の特例」がある。「貸付事業用宅地等」に該当すれば、200㎡までの土地は50%の評価減になるという非常にパンチのある制度です。相続税対策で賃貸経営を多くの資産家の方が実行される大きな理由の一つです。最初に半減ではなく、貸家建付地として約80%した後での50%ですから、全体の40%程の評価額になるということです。
基本的なことを押さえたうえで、ケースごとの評価減の効果を見ていきたいと思います。
➀土地所有者が賃貸住宅を建築した場合
②土地所有者以外が借地権を設定して賃貸住宅を建築した場合
③土地所有者が同族法人を設立し、賃貸住宅を建築した場合でかつ、
③-1借地権を設定する場合
③-2相当の時代を払う場合
③-3無償返還届を提出する場合
のそれぞれの各ケースを見ていきたいと思います。