ゲノム編集 ~「クリスパー」がAIと共に人類の未来を変える?
ゲノム編集~「クリスパー」がAIと共に人類の未来を変える?
ゲノム編集とは、ざっくりとDNA、遺伝子操作のこと。DNAの配列を、ピンポイントで好きなように修正出来るようになっている。その精度が格段に上がる技術が開発されたんだとのこと。「クリスパー」という技術。
今までも「遺伝子組み換え」という技術は40年ほども前からあったが、配列の修正が成功する確率が、1万~100万回に1回、思ったようになるかどうかという、精度の低い技術だったらしい。生物や医療のジャンルでは適用できず、研究対象は主に農産物の範囲だった。
この「クリスパー」はほぼ100発100中で、パソコンで文章編集するような程度の簡易さで、高校生が数日で習得出来る程だという。正確さ、簡易さが、別次元に突入し、よく言われるスーパー人類の「製造」が視野に入ってきているという状況。
このような状況に伴い、世界中が紛々としている。AI、人工知能と、このゲノム編集、クリスパーの2大キーワードを中心に、人類の未来が展開していく。このクリスパーを巡って、研究者の世界と産業の世界の動きを簡単に知っておきたい。
研究者の世界では、生態系をも操作可能な神の領域に突入することには極めて抑制的のようだ。世界的な会議ては、基礎研究にとどめ、生命に関することには使用禁止ということにはなっている。AIのシンギュラリティと同様に、私たち一般人が漠然と心配している、一部の人たちの手によって超人類が誕生するのでは、というようなことは、建前上、ないとはされている。
しかし、研究者の世界といっても、クリスパー開発に携わり自由に扱えるのは数名で、この人たちは当然、新たな挑戦のためにやっている。世界的な会議といっても、なんらの拘束力はない。この数名の研究者を巡って、産業の世界の動きが活発になっているということ。
一般人の発想では、スーパー人間「デザイナーベビー」にばかり気がいく。これについてもいずれ、美容整形する感覚で、お金持ちの親たちが誕生させていくことになると想定されている。が、現存する世界的大企業としてのニーズはそこではない。
まずは、今までは精度に課題があった農産物のジャンル。バイオ作物を巡って、モンサント、デュポン、バイエルというあたりのプレイヤーが中心となって、ここに社運を賭けた熾烈な競争が展開している。日本では、遺伝子組み換え作物の人体に関する影響を気にして、浸透していないが、もはやそんなレベルではない。このジャンルに関しても世界的に国際協定があり、一定の禁止事項は設けられている。が、無害である証明がなされているところから、どんどん規制が緩和されている。
ゲノム編集の主戦場、メインは医療のジャンルだ。ガンにならないスーパー生命体を創る方ではない。治療のためのものだ。明確な治療法の確立していない病気、原因不明な病気に対して。遺伝子操作に対して、必要以上に怪しいことを想像することもなさそうだ。賢い人たちはきちんと、人類のまっとうな利益の為に活用しようとしている。
このジャンルのメインプレイヤーがどの企業か?製薬業者ももちろんだが、世界の脚光を浴びているのは、人工知能開発を先導しているIT企業群。先頭を走っているのがgoogle。対抗馬がamazonでそれを追うのがIBMとmicrosoft。ついに医療もか、という感じ。どう関わっているのか?いずれも「クラウドサーバー」と「AI」を活用する、サービスモデル。
全世界の大病院、医療研究機関をクラウドサーバーで結ぶ。そこで集積されたゲノムデータ、遺伝子解析情報をそのサーバー上で共有する。その集積された遺伝子情報のビッグデータをAIにディープラーニングさせ、治療法の、DNA配列の修正箇所、修正パターンのその「解」を出させ、「クリスパー」で実施、治療(?)する。
あれこれと治療法を治験する必要はなくなる。副作用と価格の高い薬を、必要以上に飲み続ける必要もなくなるかもしれない。原因不明の病がほぼすべて解明されていくことになる。AIとクリスパー、人類の叡智の究極のコラボレーションが実現している。
ただただ、なるほど、だ。クラウドサーバーも、AI開発もその為だったのか、と思わされる。ITの巨人たちはどこに向かって何をしようとしているのか、その一端は感じられる気がする。互いの過当競争が気になるが、昨年、AIの開発活用を巡って、競争の弊害を回避するべくPartnership on AI、というAI協定みたいなものを、これらの巨人たちで作っている。
遺伝子情報という究極の個人情報の扱いについてなど、まだまだ、一般的にその治療を受けるには課題が多く、何年も先にはなるだろうが、老後に向けて期待と安心を感じる。半面、さらにその先、もう何十年も先には、スーパー人間「デザイナーベービー」をどういうのを創ればいいのか、そのDNA配列のその「解」も、結局、AIが出すことになるのか?この流れからすると、きっと普通にそうなる。大金持ちになってその選択肢があるとき、どうします?だれしもなかなか、否定しにくいのでは?