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税務・承継

オーナー経営者VS税制改正(7) 25年度改正内容・論点解説 04 ~上場、非上場株式間の損益通算不可に02

2、中小企業オーナーの事業承継

2-1、そもそも「株式」とは 

 どんな会社にもその会社の経営「資源」を所有しています。製造業なら製品、サービス業ならサービス。それらの技術・ノウハウ、特許、のれん。それらを支え維持する人材、道具、取引先。在庫や仕掛品、材料、等々。さらには工場、敷地、自社ビルなどの不動産資産。そして、稼いできたお金、オーナーやその他出資者・投資家の出資した資本金、銀行その他から借りている借入金。これらを総称して「経営資源」ととらえたりしていますが、資源と定義することにより、その資源の「所有者」と「値段」という概念が存在することになります。各資源の所有者は当然その会社ということになりますが、さらにその会社には所有者がいます(必ずしも社

長さんというわけではありません)。そして各資源にはそれぞれ値段があり、合計したものが会社の値段です。つまり、会社の所有権と値段・価値を集約したものが「株式」です。株式の意味そのものには、上場も非上場も区別はありません。会社の値段を発行している株式数で割ったものが「株価」です。

2-2、自社株の承継と税務の観点

 ですので、この「株式」の所有者がその会社と経営資源の所有者です。会社というのは突き詰めるとその株式所有者個人の個人資産になるということです。その株式所有者個人とは、中小企業の場合一般的に、創業オーナー社長です。会社を息子に引き継ぐ、いわゆる事業承継とは集約的な言い方をすれば、この株式を引き継ぐということです。そしてこの株式はあくまでも個人資産なので、親父から息子に引き継ぐといっても、そこには「税制」という分厚い壁、高いハードルが立ちふさがり、そう簡単に一筋縄ではいかないところにさまざまな問題が生じるゆえんです。

生存中に引き継いで、息子がその対価を支払わなければ、それは「贈与」になり、その対価を払ったら払ったで、上記「譲渡所得」で見たように、株式の場合、「譲渡」になります。生存中には渡さなかったとしても、亡くなれば当然「相続」が発生します。「贈与税」「相続税」、「譲渡所得課税」といずれにしても逃げ道はありません。そして、いずれの税率も高いということです。

2-3、高額な課税VS節税対策

 そして自社株の株式としての資産価値というのは、いわゆる「会社の値段」ですから、通常は相当高額になります。高額資産の引渡しに対して、高い税率が係るわけですから、高額な税金が発生します。その税金が現金で払えれば問題はないかもしれません。しかし通常、その高額な納税資金、株の買取資金等が必要になるのは息子の側であり、それ用に事前準備をしておかない限り、現金払いは困難です。延納、物納という手段はあるにせよ、いずれは現金確保の手段として、借り入れるか、何がしかの資産を売却するか、その方法や程度によってはその後の事業継続すらままならないこともありえます。つまり廃業・倒産、売却です。そうならないためにどうするのか、が相続対策、事業承継対策です。株式の資産価値をいかに引き下げて、安くして引き渡すのか。そのためにさまざまな工夫を凝らします。その工夫や方法については次月以降に順次見ていきたいと思います。

2-4、「一般取引のない非上場株式の譲渡益」とは

 さまざまな工夫をし、株価を引き下げて、息子の買取資金も事前準備しておき、創業オーナーの親父様から息子へと売却する。もともと創業オーナーの親父様の所有する株価の取得価格、もともとの値段は実質、創業当初に出資した資本金程度の価値でした。ところが、その後何十年の事業継続の中で発展し、拡大してきた経営資源、資産価値は比べようも無く大きくなっている可能性が高いはずです。ということは現状の株価は相当高額になっており、株式は買った値段と売った値段の差額が譲渡益になるので、売った側の創業オーナーには多額の譲渡益が発生し、そこに譲渡益課税がかかるということになります。非上場、未公開の株式なので、自分たちで好きに株の値段が決められるかというと当然そういうわけではなく、税務上の非常に複雑な株価の算定方法があります。

 多額の譲渡益の発生した創業オーナーはプライベートでも証券会社を通じて、上場株の売買をしていることが多いです。そうした際に、上記記事にあるように例えばリーマンショックなどの影響で、多額の譲渡損を出していることもあります。自社株の売却で発生した譲渡益と上場株の売買で失敗した譲渡損を株式同士なので、損益通算し、譲渡益を少しでも相殺し、税額を下げる、ということが行なわれている例もあったということです。

 25年度の税制改正で、平成28年1月1日以降は、上場株式と非上場株式の間での損益通算は認められなくなり、こういった節税は出来なくなるということです。

2-5、自社株の譲渡・移転の各種節税スキーム

 上記記事には自社株の後継者への移転と、「持ち株会社」への売却という表現もありました。事業承継、自社株承継という場面において、株価を引き下げて息子に引き継ぐという、シンプルに話が進むケースよりは、後継者の有無、息子の適性、親族関係、資産構成、相続税、争族対策・遺留分対策、事業の将来性、従業員雇用、退職金規定、借入金対処、体制構築、組織再編、人事処遇、等々、さまざまな観点から検討を進めなければならないケースのほうが多く、対処、対策にも実にさまざまな方策、スキームがあります。その中の一つとして「持株会社」の活用というものもあります。

 今回は長くなりすぎますので、次以降、代表的な各種スキームや株価引下方法、相続税の対策、納税・買取・返済等各種資金の準備法、等々、「事業承継」について深く掘り下げながら見ていきたいと思います。

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