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事業承継スキーム(3) 非上場株式の評価方式・計算方法(3) ~株価対策のフロー、概ねの方向性

 前回は「株式保有特定会社」、「土地保有特定会社」の評価方法を見ました。

 改めてそもそも論から確認すると、オーナー親父社長から息子へ事業を承継する際に、ヒト・モノ・カネを承継するにあたり、その事業のモノ・カネが集約されているのが自社株式となるので、その自社株式を親父から息子へ譲り渡す必要が出ます。会社のモノ・カネといえども「自社株」は個人の所有物になるので、親から子への生前なら譲渡、贈与、死後なら相続といずれも税金が発生

する対象となります。自社株の値段、「評価額」が高ければ税額も高くなり、事業を承継する際に高額なキャッシュアウトが発生します。

中小・零細企業はいわゆる上場はしていないので「非上場株式」と呼ばれ、一般市場での価格はついていない為、税法に定められた方法で価格を評価します。親から子へ渡す際にはより安い値段、低い評価額で引き渡せれば、余分なキャッシュアウトをしなくても済むので、ルール基づいてさまざまな対策をとる、ということです。そのルールに正解と間違いというものは基本的には存在しておらず、税務署から見て「租税回避」に該当すると、その行為を否認されにくい、一般的に「経済合理性」のある方法で以って、その対策を立てていくということになります。

非上場株式の評価の方法には主に2つ、「純資産価額」方式(以後は「純資」と表記)と「類似業種比準価額」方式(以後は「類似」と表記)があり、その計算式で説明したように債務超過会社や赤字会社、であれば当然配当もしていない会社はそもそも株価うんぬんではなく、承継は考えにくく、むしろ再生・精算の方向性の話になります。そこまでではなくとも、株価が低く税額を気にするほどでもなければ対策うんぬんという大げさな話は必要ないということになります。業暦、資本、売上、従業員数の何れかが一定以上の数字の会社のお話です。

対策の話に戻りますが、今まで見てきた税法のルール、周辺知識から概ねの方向性、対策フローとしてはまずは1、「純資」よりは「類似」での評価 を狙い、その上で 2、「類似」の評価を下げる 「類似」には該当しないもしくは比率が低い場合 3、「純資」の評価を下げる ということになります。

1、「純資」よりは「類似」での評価

上記一覧図表より会社区分が大きくなれば「類似」もしくは「類似」比率が高くなります。方法としては総資産額と従業員数かもしくは売上高を上げるということになります。売上高は上げたくても急には上げられないというのが実情でしょうから、対策にはならないかもしれません。従業員数も数十人単位で一気に増やすというのはやはり現実的ではないでしょう。総資産はそのためだけに数億円もの借入をお起こしても、承継後の経営に影響が大きいと思われるので適当な対策とは思えません。ただし小会社から中会社の小なら数千万の区分です。この場合は会社区分を引き上げるというよりは、前回の「株特」や「土地特」に該当している場合、そこから外れるということが主な対策になります。

2、「類似」の評価を下げる

類似業種比準価額方式では、評価会社の実績(1株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額)を上場会社と比較して評価額を調整します。この中でも、平成29年1月1日の改正前は、利益金額の調整割合が5分の3と大きくなっており、利益が大きいと株価が高くなりました。類似業種比準価額を下げるには各要素を下げればよいのですから、1株あたりの配当金額や純資産価額、特に利益金額を引き下げる対策が中心でした。しかし改正後は、配当金額、利益金額純資産価額の割合が1:1:1となり、その点の考え方が変わってきます。株価を引き下げるために、その期の利益調整をすればいい、ということでもなくなりました。

いずれにしても、会社の利益を引き下げるには、従業員賞与を支給する、古い固定資産を除却する、寄付金を支払うといった方法を使います。考え方は法人税の節税手法と同じです。

利益の圧縮には一時的なものと継続的なものがありますので、一時的なものであれば株価が下がった後、速やかに後継者に株を移転しなければなりません。利益圧縮の主なものとしては・・・・・

含み損の実現
例えば、遊休不動産などで含み損を抱えている場合は、売却して損失を顕在化させることによって利益金額を圧縮出来ます。3要素のうち利益金額には、不動産売却益等の臨時的な特別利益を加算する必要はありませんが、臨時的な損失は差し引くことができます。


退職金の支給
オーナー経営者の退職時と併せて、後継者に株式を生前贈与するのであれば、役員退職金の支払いは利益の圧縮に効果的です。一般的に、法人税法では次のように計算式による金額を役員退職金として損金算入額を認めています。「役員退職金= 最終報酬月額 × 勤務年数 × 功績倍率」。役員退職金の支給があると、多額の損金が計上されますから利益を圧縮するとともに、多額の現金支出によって純資産も圧縮でき、自社株の評価額は下がります。

生命保険の活用
生命保険を活用して利益を圧縮する手段もあります。会社が保険契約者及び受取人となり、役員が被保険者となる生命保険に加入し、支払保険料を損金に算入します。また、相続時には、会社が受け取る保険金を死亡退職金に充当することによって、相続人の納税資金を確保することができます。

退職金支給と生命保険活用ついては、一般的な対策としては最もポピュラー、スタンダードな方法になりますので、現実的にはまずはこのあたりの方法を検討することになります。ですので、詳細については次回、まとまった説明をしたいと思います。

組織再編の手法を使うのであれば、後継者を株主とする新会社を設立して、高収益部門を事業譲渡すれば、利益金額を減少させることができます。また、純資産価額がマイナス(債務超過)の会社を合併すれば、純資産価額は下がることになります。組織再編のスキームについても今後、代表的なものの手法の詳細を説明してゆきます。

3、「純資」の評価を下げる

賃貸不動産の取得

純資産価額を引下げるための方法としてよく活用されるのが、賃貸不動産の取得です。例えば銀行借入れによって賃貸マンション、賃貸オフィス、商業ビルなどの収益物件を取得します。ただしいつでも売却できるような優良な収益物件を取得し、再び現金化できるようにします。

賃貸不動産を取得した場合、土地は「貸家建付地」による評価、建物は「貸家」による評価となります。貸家建付地の相続税評価額は時価の60~70%程度(自用地の概ね8割)、貸家の相続税評価額は取得価額の30~40%程度(自己所有の7割)となり、賃貸不動産の評価は時価を大きく下回る相続税評価額となります。このように優良な収益物件の時価と相続税評価額には相当大きな乖離があります。オーナー経営者が自社株を後継者に生前贈与又は売却する際に、賃貸不動産を活用した株価引下げを実行し、その後また売却によってまたキャッシュが戻ってくる、ということになります。
ただし株式評価において、課税時期から3年以内に取得した不動産は「取得価額」等で評価しなければなりません。ですので賃貸不動産を活用した株価引下げ対策を実行する場合には、生前贈与の最低3年前に賃貸不動産を取得する必要があることには注意が必要です。

賃貸不動産の活用についても「相続・事業承継」のテーマの主要論点となりますので、各種スキームの説明時に再度詳しく見ていきたいと思います。

以降、代表的な各種スキームや株価引下方法、相続税の対策、納税・買取・返済等各種資金の準備法、等々、「相続・事業承継」についてさらに続いていきます。

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